第十三話 Merry
ギィ、ギィ
さあ始まるよ。
見世物小屋が始まるよ
おやおや今夜は道途中のお話だ
お代は見てのお帰り
喝采、喝采
シャンシャン…と音がするのに気づいて仮面の男は顔をあげた。
空には満月が輝き、星空が広がる夜だった。
「おや、お久しぶりですね」
「やあやあ。旅の途中ですかな」
「ええ、昨日アルンの町で公演を終えまして。今は次の国へ移動している途中です」
「なるほど。それで町の方々が笑顔だったのですな」
「いえいえ、私などは」
仮面の男は照れたように口角をあげた。
夜道を、馬が引いているにも関わらず音もなく進む荷馬車と、それに平行して空を飛んでいる影。
もしこれを目撃したものがいたら腰を抜かしたかもしれない。
「マルユの国はもう訪問されましたか」
「ええ、20年ほど前でしょうか」
「すっかり戦争の影もなくなってよい国になりました」
「王の交代が功を奏したのでしょう」
謎の人物は「ふむ…」といった後、「あなたのご活躍のたまものですな」と言った。
「いいえいいえ」
仮面の男は頭をかいた。
「私はきっかけを作るだけ。そのあとの国をどうするかはしょせん、そこに住む人次第なのです」
ホッホッ、と鼻息まじりにそりをひくトナカイがないた。
「おやおや、早くしろとせかされてしまいました」
「大変ですね。お疲れ様です」
「ありがとう。ではあなたにも幸運おおからんことを。メリークリスマス」
「モイモイ」
影が離れ、夜空に舞い上がっていく。
8頭のトナカイが引くソリは光の筋を放ちながら走り去っていった。
トナカイは現代と違い本作で「8頭」表記しています。
ご了承ください。




