第十二話の3 招待
数日後。
その街は門をくぐった時から空気が重かった。
門兵に見せた通行証の木札を懐にしまいながら、キョロキョロと仮面の男は周りを見渡した。
道を歩く人は少なくみなうつむいてとぼとぼと歩いている。
店も開いてはいるが活気はなく、荷馬車を物珍しそうに見やってはひそひそと、店員と客が話しているような様子であった。
それでも気にした風もなく仮面の男は道を進み、広場にやってきた。
5台もの荷馬車が簡単に入るほどには広く、ゴミ一つ落ちていないようなきれいな場所であるのに、そこで遊ぶような子供たちもいない。
仮面の男は「さてと」と言い、荷馬車の扉を開いた。
中からきらびやかな衣装をまとった若い男女が飛び出してきた。
「見世物小屋だよ!はじまるよ!」
「どなたさまも見ておいで!」
ビラをまくも民はチラッとみるや足早に走り去ってしまった。
子供が駆け寄ってきてビラを拾うと、あわてて走ってきた親らしき人間が子供を抱え上げて走り去ってしまう。
今までの町とは様子が異なっていた。
トゥリオの言ったように、みな領主におびえて暮らしているのであった。
「おい、貴様ら!」
鎧姿の衛兵が5、6人やってきた。
その姿を見て数少ない民もサァと散り散りになっていく。
「なんでございましょう」
仮面の男がへこへこと進み出た。
「お前たちか、ショーの申請があった旅芸人というのは」
「さようでございます。問題ないとほらこの通り王からも通達が」
仮面の男が差し出した紙を先頭にいた衛兵がひったくるようにして見、確認したあと荒々しくそれを戻した。
「事情はわかった。して、そこの女どもも芸人か」
「はい」
「領主様がお呼びだ。連れていく」
「は?」
衛兵らがビラを撒いていた男女のうち女性二人の腕をつかんだ。乱暴に引っ張り連行しようとする。
「おやおやあ、困った困った」
大げさに仮面の男は騒いだ。
「ぜひ領主様にとりなしていただきたく。どうか私めも連れていっていただけませんか」
もみ手をしながらいくばくかの金貨をそれぞれの衛兵の手に握らせた。
「う、うむ。確かにそなたの言い分も聞かせねばならないかもしれんな」
こうして女性二人と仮面の男は衛兵に連行されて領主の館に向かった。
女性はおとりを申し出た勇気ある娘とあの夜の団員であった。




