第十一話の3 真相は彼のみぞ知る
戻ってきた仮面の男にシンが「おっちゃん!ゴミ拾い終わったぜ!」とぱんぱんになった袋を見せた。
「あんまり売れそうなものはなかったけど、ゴミはたんまり落ちてたから拾っといた!」
「おお、素晴らしい仕事ですねえ」
本当にゴミ一つ落ちていない観客席を嬉しそうに眺めながら仮面の男は、「そうだ、そうだ」と手をたたいた。
懐から袋を取り出す。それを丁寧にシンに手渡した。
「先ほど薬屋の方から、先に渡しておくと薬を預かりました」
「え、ほんとに?」
「ええ。いつもきちんとお金を持ってくるから今回先に渡しても問題ないだろうと。渡すのを忘れていたので仕事が終わった後にと託してゆかれました」
「へ、へえ…珍しいこともあるもんだな」
「それからこれは私からです」
仮面の男は封蝋がされた手紙を取り出した。その封蝋にはユスタンの紋章が入っていた。
「これをギルドにもっていきなさい。君と弟君の生活が保障されるようにしてあります」
「え? おっさん何者だよ」
「旅の一座の団長でございますよ」
仮面の男はにっこり笑うと立ち上がった。
「さ、早く帰って弟さんに薬を飲ませてあげなさい。代金は何日後でもいいとのことですから」
「わかった。おっさんありがとな」
「団長ですよー」
手を振るシンにそう言ってから仮面の男はにこにことテントの奥に歩いていった。
数日後、シンはギルドの正式な職員として働くことになり、毎月の給与が約束された。
それは弟と二人で暮らしていくには十分すぎるほどの報酬であった。
弟を診察した医者は病が消えていると驚嘆し、薬屋を訪ねたそうだが薬屋は「仕入れた薬を渡しただけで特別なことはしていない」と丁寧に答えるだけだったという。
封蝋がされた手紙を受け取ったギルドではちょっとした騒ぎがあったのだが、それはシンの知るところではない。
ギルドの職員が旅一座のところにすっ飛んでいったが、すでに彼らは町を後にしていた。




