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ep.3

「はっ……あの魔獣は、我が小隊はどうなったのだ!」


 白昼夢のような光景を目の当たりにしてから数時間ほど、日が暮れ始めあたりがオレンジ色に染まる中、花畑のど真ん中で騎士が目を覚ました。


 当然ではあるがフルーレは騎士を抱えて家へ戻る筋力も魔法の力も持ち合わせていないため、家にあるできる限りの布や洋服を持ち出してきた後、騎士の頭を自分の膝へ乗せるなどしてなるべく彼の体に負担がかからないよう努めてはみたのだが、飛び起きた騎士の様子を見る限りどうやら大丈夫だったようで、フルーレはほっとか細く息を吐き出す。


 自分でも訳のわからないまま魔法を使ってしまったが故に、もし騎士様の体に何かあったらと気が気ではなかったのである。


「騎士様、落ち着いてくださいませ。あまり動いてはお体に障るかもしれません」


 フルーレは体を起こそうとする騎士のことを慌てて落ち着かせ、歩けるようならぜひ我が家にと、ここに住み始めてから初めて自分の家に他人を招き入れることにした。


「記憶違いでなければ、私は魔獣との戦いで致命傷を負ったはずなのだが……」


 困惑した顔をしながらも大人しくフルーレに手を引かれて歩く騎士の姿は、鎧などの装具こそ大きく破損しているものの、体の動き自体には支障がないことが見てとれる。


 騎士が流麗な動きで椅子に腰掛けるのを見て安心しきったフルーレは、つい先ほど起きた事の顛末を洗いざらい騎士に語った。緊急事態であったとはいえ、勝手に人様の体へ触れて魔法を行使してしまった謝罪の心もしっかりと込めて。


「つ、つまりそれは……君が高位治癒魔法の使い手であるということか?」

「高位治癒魔法、ですか……?」


 きょとりと首を傾げるフルーレの仕草に、切れ長で美しい騎士の瞳がきゅるりと大きく見開かれる。心底驚いたような表情を浮かべたかと思うと、彼はフルーレに向かって早口で捲し立てた。


「高位治癒魔法とは世界的に見ても使えるものが圧倒的に少ない高位魔法の一つだ。ましてやあれほどの大怪我を瞬きのうちになかったことにしてしまうほど強大な力となれば、私はこれまで人生で見たことも聞いたこともない。君、名前は?」

「ふ、フルーレと申します……」

「フルーレだと? 現代の我が国でフルーレといえば、マンソージュ家の御息女がそのような名前であったと記憶しているが、彼女はつい最近重い病に倒れて療養中であると……」


 確かベビーピンクの髪にミモザのような黄色い瞳を、と騎士がフルーレの顔をじっと見つめてきたあたりで、突き刺さる視線に耐えきれなくなったフルーレは絞り出すように声を上げた。


「あの、騎士様……そこまで知っていらっしゃるのでしたら、もう少しだけわたくしの話を聞いてくださいませんか?」

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