第三部 第14章: 茂雄と芽維子の進展
春の柔らかな光が差し込む午後、茂雄は芽維子と並んで歩いていた。最近、二人の関係は少しずつ進展しているものの、まだお互いに伝えきれていない思いがあるように感じていた。芽維子は自由で感情豊かな性格だが、茂雄はその真逆とも言える冷静で理論的な人物であり、彼女との接し方にいつも戸惑いがあった。
「どうしたの? 今日はなんだか考え込んでるみたい。」芽維子は、茂雄の表情を見てすぐに気づいた。彼女は、しばらく沈黙していた茂雄が何かを内心で抱えていることを察していた。
茂雄は少し戸惑いながら答えた。「いや、何でもないよ。ただ、最近のことを考えていたんだ。」
「最近のこと?」芽維子は微笑みながら目を細める。彼女は自分の直感を信じて、無理に聞こうとせず、茂雄が話すのを待つことにした。
茂雄は深呼吸をしてから言った。「芽維子、僕はずっと感情を抑えて生きてきた。感情に流されず、冷静でいることが一番だと思っていた。でも、君と過ごす時間が増えるにつれて、感情を表に出すことの大切さに気づいてきたんだ。」
その言葉に、芽維子は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔に変わった。「それって、私に対して感情を表現してくれたってこと?」
茂雄は少し照れくさいように頷いた。「うん、君に素直に伝えることができたから、ちょっと安心している。」
芽維子はその言葉にじっと耳を傾けながら、少し考えた後、言った。「私もね、感情に振り回されることが多くて。時々、感情を抑えきれなくなって、仕事にも影響が出ちゃうことがあるの。でも、あなたが教えてくれたように、感情と理性のバランスを取ることが大事だって思えるようになった。」
「バランスか…」茂雄は少し考え込んでから答えた。「僕も、もっと感情を大切にしないといけないな。でも、君は本当に自由だね。」
「自由に見える?」芽維子は不思議そうに尋ねる。「確かに、感情を重視しているけれど、それでも仕事には影響を与えないようにしたいと思っているんだ。でも、私は理性と感情をうまく調和させる方法を学ぶ必要があるって気づいたの。」
茂雄はその言葉を聞いて、芽維子の成長を感じた。彼女は以前よりもずっと冷静に物事を捉えられるようになったようだ。二人は共に成長していると感じ、その思いがお互いの心に深く刻まれる。
「君は本当に素直で、しっかりしているよ。」茂雄は心からそう言った。芽維子はその言葉に微笑みながら、茂雄の手を軽く握った。
「ありがとう。あなたもね、ちゃんと感情を大切にしているのを見て、私も安心している。お互いに支え合っていける関係になれたらいいなって思う。」
茂雄はその言葉に胸が温かくなり、彼女の手をしっかりと握り返した。「僕もだよ。君となら、どんなことでも乗り越えられる気がする。」
その後、二人はゆっくりと歩きながらお互いに笑顔を交わした。仕事での忙しさや不安もあったが、今は二人でいることで心が落ち着き、前向きに進んでいけると感じた。仕事でも恋愛でも、感情と理性をうまくバランスを取りながら、お互いを支え合って生きていくことができると信じていた。
帰り道、二人は手を繋ぎながら、次のデートの計画を立て始めた。お互いの成長と理解が、確実に二人の関係を深めていることを実感しながら、未来に向けて歩みを進めていった。
第14章終




