第三部 第13章: 由妃帆の成長と恋愛の始まり
由妃帆は、静かな午後の光の中で、自分の心の変化を感じていた。部屋の窓から見える公園の木々が、風に揺れる音を響かせる。彼女のデスクには、仕事で使う書類とともに、少し前に手に入れたばかりの恋愛に関する本が並べられている。それは、浩之と莉奈から勧められたものだった。彼らは、由妃帆が恋愛に対して積極的に向き合うことが必要だと繰り返し話していた。そして、今、由妃帆はそのアドバイスを少しずつ実践している自分に気づき始めていた。
「私、どうしてこんなに戸惑っているんだろう。」由妃帆は自分に問いかけるように呟く。これまでの彼女は、自分の気持ちを表現することが怖かった。家庭で育った環境が影響し、自己表現に対する恐れがあった。しかし、最近はその恐れに立ち向かおうとし、少しずつその壁を壊している自分に気づいていた。
そして、何よりも大きな変化は、皓貴との関係であった。彼との関わりを通じて、由妃帆は自分を大切にし、感情を素直に伝えることの重要性を学び始めていた。
「私、これからもっと自分を大切にしよう。」由妃帆は心の中で誓いを立てると、少し肩の力を抜いて深呼吸をした。仕事でも家庭でも、自分の意見を控えがちだった彼女は、今はその反動で自分を表現することに一歩踏み出していた。
その時、携帯が震える。画面を見れば、皓貴からのメッセージが届いていた。
「今度、一緒に出かけないか?」
由妃帆は少し驚いた表情を浮かべる。これまで彼女は、皓貴に対してもその気持ちを表に出すことができなかった。何度も彼に対して自分の気持ちを伝えたいと思いながらも、その一歩を踏み出すことにためらっていた。だが、今の自分なら、違う。
「行きたい。」由妃帆は素直に返信を送ると、画面に微笑みを浮かべた。自分の気持ちを伝えることが、こんなにも心地よいことだとは思わなかった。
数日後、由妃帆と皓貴は待ち合わせ場所で再び会うことになった。皓貴は穏やかな笑顔を浮かべて、彼女を迎えてくれた。彼の優しさに、由妃帆は少し心を躍らせる。
「今日はどこに行きたい?」皓貴が尋ねる。
「どこでもいいけれど、少し静かなところがいいな。」由妃帆は答えると、皓貴は納得したように頷き、二人は街を歩きながらお互いの話を続けた。
その日は、由妃帆が思い切って自分の気持ちを伝えた日でもあった。彼女は、皓貴に対して初めて自分の気持ちを素直に伝えたのだ。「あなたと過ごす時間が、私にとってとても大切だと思っている。」その言葉を、言うのは怖かったが、言うことで心が軽くなった。
皓貴は驚いた表情を見せたが、その後、優しく微笑んでこう言った。「僕も、君と過ごす時間が大切だ。君ともっと色んなことを話したいと思っている。」
その言葉に、由妃帆は自分の胸が温かくなるのを感じた。これまで自分の気持ちを抑えてきたが、今はその心の壁を少しずつ崩すことができたと感じていた。
帰り道、二人は並んで歩きながらお互いに少しだけ距離を縮めていた。由妃帆はその時、ようやく自分が一歩踏み出せたことを実感し、安心した気持ちになった。
その晩、由妃帆は浩之と莉奈に報告することにした。二人の支えがあったからこそ、彼女はこれまで恐れていた一歩を踏み出すことができたのだ。
「浩之さん、莉奈さん、ありがとうございます。今日は、少しだけ自分の気持ちを伝えたんです。」由妃帆は嬉しそうに話すと、二人は同時に微笑んで頷いた。
「それが大事だよ、由妃帆。自分を大切にして、素直な気持ちを伝えることが、恋愛だけでなく、人生においても大切なんだよ。」浩之が優しく言う。
「本当に。あなたが素直になったことで、きっとお互いにもっと素敵な関係が築けるはず。」莉奈も続けて言った。
由妃帆はその言葉を心に刻みながら、自分がこれからも成長していくことを感じていた。恋愛においても、自己表現をすることで、もっと自分を大切にしながら前に進んでいけるのだと実感していた。
第13章終




