第35話 レベルアップと今の目的と
「到着しました! みなさん、お疲れ様でした!」
最初のモンスターとの戦闘以外、特に妨害も無く無事にモーリス村へ辿り着いた。
辺りはもうすっかり夜なので、詳しい話や村長さんとの顔合わせは明日にして、今日はそれぞれ各家族に一軒用意された家で一晩過ごす事になった。
今は誰も使っていない家なので、問題は無いだろう。
「前の持ち主」は山賊にやられたので、今は空き家になっていた家だ。
折角なので、利用できる物は何でも利用しようという事だな。
その方がこの村にとってもいいだろう、村人が増えるのは歓迎だからね。
何故かエレクシアは俺の家へ来ると言い出し、一悶着あったものの、何とか落ち着いた。
「それじゃあ明日ね、おやすみジョー。」
俺も今日は流石に疲れた、ゆっくりと休みたい。
夕食はパンにスープだ、そういえば干し肉を切らしていたんだった。町まで買いに行くか、村で用意してある食料庫から幾つか買うか。
「さてと、今日はこいつで乾杯だな。」
ピーター村の店で手に入れたお酒、蜂蜜酒をコップに注ぐ。
「うーん、良い香り。酒はその村の特色が出るって聞いた事があったな。」
こいつはいける、そんな予感をしつつ一口飲む。ごくりと喉を鳴らし、味を確かめる。
「うん、いいね。こいつは当たりだ。」
その時、俺の頭の中でファンファーレの音と共に女性の声が聞こえた。
【山賊団の壊滅報酬として経験点3000点獲得しました】
【バレリントン兄弟討伐ボーナス、経験点1500点獲得しました】
【アインの運命を改変しました、ボーナス経験点1000点獲得しました】
【クラレットの運命を改変しました、ボーナス経験点1000点獲得しました】
「おお!? 何だ何だ!? やたらと経験点を貰ったみたいだが。」
あ、そうか。この前の山賊団討伐作戦の時の、きっと成功報酬ってやつだな。
うーむ、中々に良い感じになってきたじゃないか。
「えーっと、経験点が合計で………。」
指折り数えてみた結果は。
「な! なんと! 6500点も経験点を獲得したってのか!?」
こいつは凄いぜ! これで一気にレベルアップが見込めるな。よしよし。
俺は早速キャラクターシートを思い浮かべた、頭の中で表示されている。
「うーむ、マジこれ便利。」
ミードをちびちびやりながら、俺はレベルアップを思い浮かべる。
まずは、ファイターのLV4を上げよう。2つくらい上がりそうだ。
経験点を4000点使って、メインジョブのファイターをLV6まで上げた。
「よしよし、中々様になってきたぞ。これで冒険者レベルも6まで上がったぜ。」
さて、この次は能力値上昇のダイス振りだ。レベルが2つ上げたから、2回チャンスがあるぞ。
頭の中でサイコロを転がす、出た目は6。精神力に決まった。もう一回振って3。
「精神力の値が3上昇した、まあ、敵の魔法に多少抵抗出来るのは良い事だ。」
2回目は、2が出た。体力値が上昇するぞ。戦士には必要な能力だ、スタミナがモノを言う。
さて、上昇値は? サイコロを振る、出目は、3か。まずまずだな。
キャラクターシートの能力値のところが書き変わっていく、よしよし。
「残りの経験点は2000点か、前回のヤツの分が残っていたからな。」
ふーむ、悩みどころだな。スカウトを上げるか、レンジャーを上げるか。
スカウトなら、1つ上げられる。レンジャーなら2つ上がる。
さて、どうしようか。スカウトのLVは3だが、レンジャーはLV1のままだし。
「ここは一つ、レンジャーをLV3まで上げて、パッシブスキル「薬品効果上昇」を狙ってみるか?」
このスキルは回復薬などを使うと、効果が2倍になるというモノだ。
「HPも上がって来た事だし、ここは一丁、スキル狙いでいってみようか。」
頭の中で思い浮べ、レンジャーのLVを3まで上げる。
「よしよし、これで経験点を使い切ったな。」
あとは能力値上昇のダイス振りだ、2回チャンスがあるぞ。いいねいいね。
最初の1回目は、1が出た。やった、筋力値が上がる。戦士には必須だ。
もう一回振って、出目は5だ。うむ、悪く無い。シートが書き変わる。
2回目のステ振り、サイコロが転がる。出目は3、敏捷値に決まった。
上昇値は、おお! 6が出た、やったね。これもシートが書き変わる。
それと同時に、スキル欄に「薬品効果上昇」が足された。よしよし。良い感じだ。
「これマジ便利。」
これで俺のレベルは、ファイターLV6、スカウトLV3、レンジャーLV3になった。
冒険者レベルも6まで上がったし、スキルも取った。確実に俺は強くなっていると思う。
「この感じ、悪く無い。」
なんだか嬉しくなって、顔がニヤケてしまう。俺は今、楽しいんだと思う。
「やっぱり、レベルアップってのは、良いモンだな。」
ほろ酔い気分で迎えた夜は、心地良い充足感に満たされていた。
「おっと、酔いが回る前に今後の事について考えよう。」
山賊の討伐は成った、俺としてはここまでで十分だと思うが、やはり気がかりなのが姫様の件だろう。
「宰相のゴッタに王城を乗っ取られたんだよな、うーん、俺も一応この国の人間だし、ネリー姫様の力になってあげたいけど。」
はたして、俺がいかほどの役に立つのだろうか。
冒険者としてはまだまだ駆け出し、この世界の事はルールブックの内容の事しか思い出す程度の事柄しか分からない。
「これって、姫様の役に立つとは言えないんじゃないかな。」
俺だけが知っている知識か、正直、どこまで自分がやれるか分からん。
だが、やってみる価値はあると思う。
少なくとも、ネリー姫様と知り合った事は確かだし。まあ、身分不相応だけど。
それでなくとも、俺にはお金が必要だ。この村の為にも、働き手の奴隷を買う事は出来る訳だし。
「ピーター村からの移住者だけでは、やはり人手不足は補えんか。」
もう少し男手が必要だ、女の奴隷に比べて男の奴隷は安い。目的や役割が違うし。
それでも、幾らかは資金を調達しなければなるまいよ。
その為にも、バーツさんの手伝いとして、またパーティーを組むのも良いかな。
ネリー姫様が王都を奪還すれば、報酬も期待出来るし。
何より、この国をゴッタの好きにさせなくてもよかろう。悪人みたいだし。
「と、言う事は、俺は明日マーロンの町へ行って、バーツさんと合流だな。」
そうと決まれば、今夜は早いとこ寝るに限るな。
部屋のロウソクの火を消して、俺はベッドへ身体を横たえる。
疲れが溜まっていたのか、俺は直ぐに眠りに就いた。




