第31話 村の集会
「みんな、よく集まってくれたね。村がこんな状況なのに。」
今日は俺の住む村、モーリス村の集会日だ、場所は村長さん家の納屋。
普段なら親父が出るのだが、もう居ない。なので俺が出席している。
他にも父親が居ない家の奥さんとか、娘さんとかが代わりに出席している。
村の男衆はみな山賊によって殺されたから、残った男は年寄りか子供だけだ。
村長さんの奥さんが代わりに村の代表を務めている、みんなは納得済みだ。
「ねえマーガレット、もうあんたが村長をやりなよ。その方がみんな納得するよ。」
「そうよ、いつまでも塞ぎ込んでいたら、死んでいった者達も安心して女神様の下へ行けないだろう。」
「そうだねぇ、じゃあもう私が村長をやるよ。良いかねぇ?」
「「「「「 さんせ~~い!! 」」」」」
こうして、新たな村長さんが誕生したのだった。みんないつまでも暗い顔じゃないって事か。
女性は強いなぁ、俺は正直まだ引きずってる感じだ。
まあ、山賊団討伐作戦に参加して、仇を討った事はみんなに感謝されたが。
気を取り直して、みんな和気藹々とした明るい雰囲気で、会話を楽しんでいる。
だが、そろそろ話し合わなければならない案件があった。他でもない、村の事だ。
「さてみんな、これからの村の事なんだがねぇ。」
村長さんがみんなに注目を集め、これからこの村の事を話し合わないとならない事を言う。
「はっきり言うと、村の男衆が居なくなって、村の働き手が居ないんだよ。」
「確かに、ジョー一人に苦労をかける訳にはいかないからねえ。」
そうなのだ、俺は今この村で一人の「力仕事」が出来る男なのだ。
正直、キツイ。村の産業である作物関係、畑関係、その他雑用、疲れてくたくた。
どうしても優先しなければならない事である、野生動物や野良モンスターが畑を荒らす事に対処する為に、俺が一人でやっている。
流石にしんどい、なので俺は、以前手に入れた冒険者依頼などの報酬を村に寄贈した。ざっと金貨10枚。
そのお金で村に農民奴隷を買おうという話になり、みんなの顔に明るさが戻ってきた。
「いいのかい、ジョー。あんたのお金だろう?」
「いいよ、村長さん。奴隷を買おう、この村の為に。」
「ありがとうよ、感謝するよジョー。」
まあ、俺が楽をしたいからなんだが。お金は使うべき時に使う。貯めるのは余裕が出来てから。
「気にしなくていいよ、それより、奴隷落ちする様な人を信用出来るのかって話なんだけど。」
殺人などを犯す者は、基本縛り首だが。ちょっとした犯罪、食い詰めてパンを盗んだり、他人の物を盗んだりといった、「手癖の悪い」人が奴隷落ちする。
そうした「手癖の悪い」人というのは、あまり歓迎されない。嫌われるだろう。
「だけどジョー、このままじゃあんたが働き過ぎて倒れちまうよ。」
うーむ、確かに。日本でも問題になってたっけ。
と、ここで村の長老、ボムじいさんが会話に入って来た。
「のう、ジョーよ。農民奴隷は元々は農民だったんじゃし、食いっぱぐれて悪さした者が多いんじゃから、しっかりした労働、温かい食事、そして僅かな金子、それらをしっかり保証してやれば奴隷も張り切るじゃろうし、完全に信用は出来んまでも、半分ぐらいは信じてもよかろう。」
ふーむ、確かに。労働に対して僅かとはいえ給金を与えれば、自分を買い戻せると考えて、下手な事はしないかもしれないな。
「流石ボムじいさん、頼りになるねえ。」
「ふぉっふぉっふぉ、伊達に歳くっとらんわい。」
「よし! じゃあそのお金で農民奴隷を買えるだけ買うって事で、あとは。」
やはりそれだけではまだ弱い、もっと他に良い案は無いものか。
俺が考え込んでいると、カリーナが意見してきた。
「ねえ、村に女神教会を建ててもらうっていうのは?」
「ふむ、女神教会か。」
確かに、今まで村に女神教会が無かった事で、みんな町まで行っていたから。
もし村に女神教会があったら、わざわざ危険を冒して村の外へ行かなくても良くなる。
それに。
「遺族たちにも、ちゃんと祈りたいって人、結構居るから………。」
カリーナは少し顔の表情が暗くなったが、直ぐに気を取り直して言う。
「それに私、女神教会の人と一緒に貧しい人達に回復魔法を使って、ちゃんと貢献してきたからさ、私の顔は知ってるって人、結構居るのよ。」
うむ、それは良いな。村にとってもプラスになるだろう。
「そうかい、じゃあ女神教会の件はカリーナに任せようかねぇ。」
「分かったわ、村長さん。」
よしよし、中々話が進んできたな。あともう一押し何かあれば。
「ねえボムじいさん、他の村からこっちに移住してくれそうな話ってあるかな?」
「うーん、それはどうじゃろうなあ。」
俺の意見に、ボムじいさんは難色を示した。
「確かに山賊どもが他の村も襲っていたが、それは儂等の村だって同じ事じゃろう。」
「そっか、俺達と同じ境遇にいて、自分の村が大切だから、うちに来る事は無いか。それにそこの男衆が余ってる事は多分無いだろうし。」
妙案だと思ったが、考えが浅かったか。
「いや、ジョー。その話なんだけどねぇ。」
ここで村長さんが俺に言って来た。その顔は明るかった。
「実は他の村からうちの村に移住したいって話があってねぇ。」
「えっ、そうなんですか?」
「ただねぇ、みんなが言うには、ジョーがこの村に居るからなんだよ。」
え? 俺。
「どう言う事ですか?」
「あんたが高額賞金首のバレを退治したじゃないか、それでね、あんたがこの村に居たら安心って事で、他の村からの移住者が居てね。」
「ええ! でもそれって俺だけの功績じゃないですよ、あの戦いに参加した人達のお陰で倒せたと思ってるんで。」
それは事実だ、俺一人ではどうにも出来なかっただろう。俺だけの手柄じゃない。
「でもねえ、やっぱりあんたを頼りたいんだよ。みんなは。」
うーむ、そう言われてもなあ。
俺はもう少ししたら、この村を出て冒険者としてやっていこうと思っているんだよね。
ふーむ、このままじゃ俺はこの村を出れなくなるかもしれないな。それは嫌だ。
ここはやはり、早急に村の守りを厚くする必要があるな。
具体的に言えば、農民奴隷の確保。これしかない。
その為には。
「村長さん、俺はもう少しお金を稼いできます。金貨10枚ではやはり足らないかもしれませんので。」
「ええ、大丈夫かい?」
「そうよジョー、無理しちゃ駄目よ。」
村長さんとカリーナが言うが、俺はもう少し稼いで奴隷の購入金額を多めに用意したい。
とにかく、奴隷の数を揃えたい。働き手の若い奴隷は高いだろうし。
だが、いわゆる「夜のお相手奴隷」程は高くないだろう。女奴隷を買うつもりは無い。
「実はアテが無い事もないんだ、昨日手紙が届いてさ。」
その手紙は、バーツさんからの物だった。
「何でも、ネリー姫様が行動を起こすみたいでさ、王都奪還に協力しないかって。」
「えっ、また戦うの? ジョー。」
カリーナは不安げに言い、俺の顔を覗き込んだ。
「大丈夫だよ、山賊の時みたいに兵の数が足らないって事じゃなさそうみたいなんだ。」
「でも、危ないんでしょ。」
「まあ、後ろの方で大人しくしてるよ。ははは。」
俺だって危険は冒したくないし、まあ、冒険者が危険を冒さないってのも考え物だが。
「とにかく、俺はその話に乗っても良いかなって。」
「まあ、ジョーが自分で決めた事だし、私は反対しないけどさ。」
カリーナはどこか寂しそうだ、なんだろうか? まあいいや。
「それじゃあジョー、悪いんだけど、ここから東に行った山村に行って来てくれるかい? そこでこっちに移住したいって人達が待ってるらしいから。」
「分かりました、じゃあ俺、今日にでも行って来ます。」
「よろしく頼むね、ジョー。無理はしちゃいけないよ、いいね。」
「はい、じゃあ。」
こうして俺は、まず自分の家へ行き、荷物を選びながら山村の所までの道順を頭に思い浮べる。
「あの山岳地帯を行く訳だから、歩きで1日くらいかな。」
旅支度も完了し、俺はモーリス村を出て、東へ向けて歩き始めた。




