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第16話 報告と報酬とこれからの事


 

 マーロン伯に自警団団長からの手紙を渡し、俺達は冒険者ギルドへ戻って来た。


 「ふーやれやれ、ようやく戻って来たな。」


 「色々あって疲れたよ。」


 「お腹空いたわね、ご飯食べたい。」


 「俺もだ、腹減ったな。」


 「こういう時は酒だよ、あんた等。」


 「さすがドワーフ、酒好きなのは種族か。」


 「うるさいよ、バーツ。」


 ギルドの受付嬢に手紙の配達完了を報告し、依頼達成を確認されて報酬の銀貨3枚を受け取った。


 その報酬で俺達はギルドに併設された酒場で、労いの酒を飲む事になった。


 テーブル席に座り、ウエイトレスさんに蜂蜜酒(ミード)を注文して乾杯となった。


 その時だった、突然俺の頭の中でファンファーレの様な音が鳴り、女性の声が聞こえた。



 {シナリオをクリアしました}

 {経験点3000点獲得}

 {シナリオ報酬 銀貨100枚獲得}



 「な!? なんだ!? 突然!?」


 俺が慌てて立ち上がると、バーツさんが素っ気ない態度で声を掛けた。


 「どうした? ジョー。」


 「いや!? なんか!? 頭の中から音と声が………。」


 「声? そりゃあ周りの冒険者たちも酒の席で騒いじゃいるが?」


 いや、そうじゃない。これはおそらく俺だけにしか聞こえない様だ。


 経験点と言っていたな、これはあれか? TRPG的なノリのアレか?


 「兎に角席に着けよジョー、依頼達成の報酬で乾杯だ。それとマーロン伯から貰った報酬の山分けだぞ、銀貨100枚だから一人20枚ずつな。」


 バーツさんの言葉に、ドワーフ女の盗賊(シーフ)ベルが申し訳なさそうに答える。


 「あたいも良いのかい?」


 「何言ってんの、ベルが今回の立役者だろう。ネリー姫さんを城の牢屋から救出したのはベルなんだから、遠慮すんなよ。」


 ベルはハニカミながら嬉しそうにしている、そうだよな、今回はベルが行動を起こしたからこその出来事だろう。


 「じゃあ、お言葉に甘えて。」


 こうして、俺達は報酬の山分けをして、ホクホクの状態で会話を始めた。


 やったね、銀貨20枚だ。懐事情が良くなったのは事実だ。


 「先ずはお疲れさん、即席のパーティーとはいえ中々様になっていたよな、俺達。という訳で、かんぱーーい!」


 「「「「 かんぱーーい!! 」」」」


 バーツさんが音頭を取り、みんなで乾杯してジョッキを傾ける。


 こういう酒は嫌いじゃない、村での事を思い出すと暗くなるが、今は楽しもう。


 隣を見ると、フォルテやメロディーも複雑な表情で飲んでいた。


 無理も無い、俺も彼等も生まれ育った村の惨状を思うと、どうにもはしゃぐ気になれない。


 酒は美味いのだが、どうにも………ね。


 「どうしたお前等? こういう時はパーっと飲むもんだぜ。」


 「バーツさんは良いですよね、報酬を貰って懐が潤ったんだから。」


 「ちょっとフォルテ!」


 メロディーがフォルテを諫めたが、何やら空気が重い。


 「けっ、辛気臭せえ顔しやがって。お前等だけが不幸って訳じゃねえぜ?」


 「解ってますよ、ただちょっと騒ぐ気になれないだけです。」


 「それが辛気臭せえって言ってんだ、フォルテ、はっきり言うぞ。世の中理不尽だ、理不尽でも生きていかにゃならん。村での生活は過酷なのは知っている、碌な防御柵も無しにやれ賊の襲撃だ、魔物の襲撃だ、誰かが死んだ、殺された、それでも生きていかにゃならんのさ。」


 「説教ですか? 解ってますって言ってるじゃないですか。」


 空気が、雰囲気が、暗い、重い、こんな酒は好きじゃない。


 「あんたいい加減にしなよフォルテ! 私だって辛いんだから。」


 メロディーが遂に泣き出してしまった、それを背中をさすって慰めるベル。


 「あのさ、何があったのか知らないけど、お酒ってのはもっと楽しく飲むモノだよ。こんな空気じゃとても飲めないよ。」


 「悪いなベル、俺もフォルテ達も、生まれ育った村が賊に襲われてな、何とかしたくてここまで来たんだが、余裕が無いんだよ。」


 俺の説明を聞いて、ベルは思案気にして意見を述べた。


 「それって、さっきのマーロン伯の言ってた事?」


 「ああ、それもあるが。」


 そう、ネリー姫様をマーロン伯に引き合わせた後、俺達冒険者にある話が持ち掛けられた。


 ここでバーツさんがみんなに意見を求めた。先程のマーロン伯の話だ。


 「で、どうするみんな?」


 「王都へ行って、ネリー姫様の為の軍資金を奪ってくるって話ですか。」


 俺が答えた後、ベルが肩をすくめて言った。


 「せめて拝借すると言って欲しいね、元々は国庫だし、姫様の書簡で幾らでも好きに持って行けるって事だろう? ゴッタがそれを許すとは思えないけどさ。」


 「まあ、金があればその金で兵隊を雇う事も叶うからな。ネリー姫さんに迂闊に力を付けさせたくないんだろう。ゴッタとしては。」


 「問題はどうやって王城に入って盗みを働くのかって事だよ、あたいはシーフで魔法使いじゃないからね。牢屋を抜け出すのだって相当な賭けだったんだよ。」


 ベルの言葉にバーツさんが顎に手をやり、ベルに聞いた。


 「ゴッタの私兵や衛兵の数は?」


 「滅茶苦茶たくさん、把握できない位は居るだろうね。」


 「うーむ、ざっと見積もって、400から500ってところか。」


 俺はバーツさんに質問した。


 「どうしてそんな数が解るんですか?」


 「簡単だ、ロファール王の軍隊がレダ王国に派兵した。その数は約4000。」


 「なるほど、残った兵隊さんの数がそれ位って事ですか。」


 「そう言う事、で、残った兵隊がゴッタの息の掛かった奴で、あとはゴッタの私兵だな。」


 うーむ、それでも500は居るのか。厄介だな、どうやって中に忍び込むか。


 「出来っこない、詰んだよ。俺達が幾ら頑張ったって無理だ。」


 「私も、そう、思う。」


 フォルテとメロディーは意気消沈している、これ以上無理をさせる訳にはいかなさそうだな。


 「一応、マーロン伯は無理にとは言わないと言っていたがな。」


 「あの辛そうな姫様の顔を見ると、どうにも力になってあげたいですね。」


 「同情はするが、俺もメロディーも余裕が無い。俺達の問題は自分の事だけで精一杯だ。賊の討伐に軍も出してはもらえないみたいだし。」


 「でも、私も姫様には何かの力になってあげたい。けど………。」


 「ああ、解ってる。無理にとは言わんさ。何か策でもあれば良いんだがなあ。」


 「あたいはやるよ、乗りかかった舟だし。」


 作戦か、思いつく事は無くは無いが。さて、どうしたもんか。


 みんなで顔を突き合わせて、あーでもないこーでもないと話していたが、結局打開策は出なかった。


 夜も更けて来た頃、フォルテが立ち上がり溜息を一つ。


 「どうやらここまでだな、俺とメロディーはパーティーを抜ける。短い間の付き合いだったが、所詮即席パーティーだ、じゃあな。」


 「ちょっとフォルテ! もう、勝手なんだから! バーツさん、ジョー、ベル、お世話になったわね。短い付き合いだったけど楽しかったよ。じゃあね。」


 そうか、二人共パーティーを抜けるのか。折角知り合ったのに寂しくなるな。


 「おう、何かあったら、また会おうぜ。」


 「あたいの事、忘れないでよ。メロディー。」


 「フォルテ、メロディー、あんまり無茶すんなよ。じゃあな。」


 「うん、ジョーもね。それじゃあ。」


 フォルテはこちらを振り向かず、さっさと離れて行った。


 メロディーはみんなに挨拶して、後惹きながら離れて行った。


 後に残されたのは、俺とバーツさんとシーフのベルだけだった。


 何だかあっけなく解散しちゃったな、俺達。まあ、馬が合わない事もあらあな。


 「ふう~~、やれやれ、ソードアックスは解散か。寂しくなりますね、バーツさん。」


 「お前は良いのか? ジョー。」


 「あてが無いと言えば、そうですが、俺、ちょっと思い付いた事がありましてね。」


 「思い付いた事? 何か策でもあるのか?」


 「策って程じゃないんですが、ゴッタの私兵が有能か無能かで決まりますね。」


 「何だい? あたいにも教えておくれよ。」


 「まあ、どの道少数精鋭で事を運ばなくちゃならなかった事なんですけどね。」


 おっと、その前に。


 「俺の考えた作戦は、盗賊のベルが欠かせないんですよ。」


 俺はベルの方を向き、ベルの肩に手をポンっと置く。


 「え? あたい?」


 「シーフって事は、解錠のスキルを持ってますよね?」


 「解錠、ああ、あたいのスキルで持ってるよ。」


 よし、じゃあ問題無いな。後は俺とバーツさんのやる気だけ。


 「バーツさん、俺の考えた作戦に乗っかってみる事ってありですか?」


 「うーん、危険度に寄るな。」


 「危険ですよ、かなり。敵地潜入ですから。」


 「おいおい、物騒だな。一体俺たちに何をやらせようってんだ? 面白そうじゃねえか。」


 よし、バーツさんは面白そうだと乗っかってきた。

 

 「あたいの解錠スキルが役に立つのかい? だったらやってみようかねえ。」


 よし、ベルも乗って来た。後は俺の覚悟だけ。


 これは相当な賭けだ、失敗すれば即牢屋、下手すりゃ死ぬ。


 「引っかけるんですよ、宰相のゴッタを。」


 「どうやって?」


 「このネリー姫様の手紙で。」





 


 

 


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