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第12話 手紙の配達依頼達成





 「ようやく目的地の町に到着したな。」


 一本橋の戦いから直ぐ、移動を開始したらもう目と鼻の先に町の壁が見えた。


 ギルドからの依頼である手紙を、この町の自警団本部に届けるという事だ。


 町の壁門まで来た、守衛が二人立っていたので近くまで行き、声を掛ける。


 「こんにちは、冒険者ギルドの依頼で来ました。」


 「おーう、ご苦労さん。一応規則だからギルドカードを見せてくれ。」


 俺達四人はそれぞれ自分のギルドカードを取り出し、守衛に見せた。


 「はい、結構です。通って良いですよ。問題は起こさない様にしてね。」


 「解ってるよ、俺たちゃ子供か?」


 バーツさんが応対して、守衛と別れて町の中へと入る。


 「う~ん、潮風が気持ち良い。」


 メロディが町の匂いを嗅ぎ、伸びをする。それをバーツさんが返事した。


 「そうだ、この町は港が併設されていて、漁港としても機能する。だがまあ、本来の目的は他所からのお客さんを迎える港町ってところだな。」


 「じゃあ、大陸横断船とかがこの港に出入りするんですか?」


 「そうだ、だが今はその大陸横断船も来ていないがな。」


 ここで俺が尋ねてみる。


 「どうしてですか?」


 「俺も詳しくは知らんが、セコンド大陸で戦だからじゃねえか?」


 ふーむ、戦か、どうにもきな臭い話だな。まぁ今の俺達には関係無いか。


 フォルテが漁で揚がった魚を見て、ウンウンと頷いている。


 「この魚の匂い、新鮮な魚料理が恋しいぜ。」


 バーツさんがこちらを向き、二人に聞いていた。


 「ん? そういやあフォルテとメロディはこの国の漁村出身だったな。」


 「ええ、リエントって小さな漁村なんですけどね、この国の王都から西へ行ったところにありますよ。」


 「村の皆は無事かしら、海賊に襲われて復興作業に時間が掛かっているだろうし。」


 フォルテとメロディはお互いに頷き合い、バーツさんもこれからの事について話した。


 「そうだな、早いとこ仕事を終わらせて、マーロンの町に帰って領主様にもう一度懇願してみないとな。」


 「はい、私達もジョーも、故郷の村が心配ですし、早く賊の討伐隊が組織されれば良いんですけどね。」


 そうだよな、俺の事ばかり考えても仕方ない、フォルテやメロディだって自分の村が心配だろうに。


 「よし、早速手紙を自警団本部へ届けに行くか。」


 「「「 はい。 」」」


 こうして俺達は、依頼の手紙を届ける為、この町の自警団本部前に来た。


 バーツさんがこの一党のリーダーなので、バーツさんに応対してもらった。


 自警団本部の受付に冒険者ギルドの依頼で来たと伝え、応接間に通された。


 長椅子に座っていると、一人の男が部屋に入って来る。


 「待たせてすまない、マーロン伯からの手紙を届けに来たらしいな。ご苦労、俺はこの町の自警団の団長をしている者だ。」


 団長さんが出て来たので、こちらもバーツさんが応対した。


 「俺はバーツ、冒険ギルドに所属している、依頼でここまで来たのだが、あんたに手紙を届ける為に来た。」


 そう言いつつ、バーツさんは懐から一通の手紙を取り出し、自警団団長に手渡した。


 手紙を受け取った団長は、うむと頷き、手紙を開封して中身を読んだ。


 「………………。」


 俺達は暫くの間黙っていて、手紙の内容を聞こうと思い、待つ。


 ところが、手紙を読み終わった団長が、俺達に手紙の内容を伝えて来た。


 「なるほど、ようやくマーロン伯が動くか。」


 「と、言うと?」


 バーツさんが聞き、団長さんが答える。


 「マーロン伯が山賊討伐に私設軍を編成中らしい、俺達自警団にも参加の要請が来た。これはその手紙だ。」


 これを聞き、皆の顔色は明るくなった。


 「じゃあ、いよいよ?」


 「ああ、俺達もこの町の守りがあるから、全員という訳にはいかないが、何人か寄越す事は可能だ。」


 よし! やったぞ。これで一歩前進したな。山賊討伐まであと少しか。


 「すまんな、フォルテ、メロディ、俺だけ山賊絡みの案件が進み出して、お前等も海賊の問題があるってのに。」


 「気にすんなよジョー、山賊が討伐されれば、次は海賊討伐の番だ。マーロン伯ならばきっとそこまでやってくれる筈だ。」


 「そうよジョー、まずは山賊からって事でしょ。海賊の問題だって無視は出来ない案件だろうし、きっとマーロン様も準備はしてると思うわよ。だから気にしないで。」


 「ありがとう、二人共。」


 フォルテにメロディだって、自分のところの村が心配だろうに、俺に気を使わない様に言葉を掛けてくれる。


 良い仲間に出会ったな、俺は。山賊討伐が成った暁には俺も海賊討伐に参加しよう。


 「で、どの程度の戦力を回せるんだ?」


 バーツさんが聞き、団長が答えるのだが、ここで団長さんが言った言葉は難色を示す言葉だった。


 「そうさな、少なくとも5,6人の戦士を派遣できそうだが、こっちも港の守りがあるからな、今は海賊も大人しくしているが、いつ動き出すか解ったもんじゃないからな。」


 「5,6人か………………。」


 バーツさんは眉間に皺を寄せて唸った。戦力を出して貰えるだけでも有難いと思うけど。


 「団長さんよ、はっきり言うが、山賊の戦力は最低でも二百は居るぜ。もう少し何とかならんか?」


 「無理だ、言ったろう、こっちにも都合があるんだ。この町の守りを手薄にしたくはない。解ってくれ。」


 「ああ、それは俺達が判断する事じゃない。あんたに頼む事柄だからな。」


 「うむ、ちょっと待ってろ、今マーロン伯への返事の手紙を書くから。」


 そう言って、団長さんは机に向かい、ペンを取って手紙を書き出した。


 暫く待っていると、手紙を書き終えた団長さんが俺達にこう言って手紙を渡した。


 「これがマーロン伯への返事だ、ギルドに届けるよりも直接伯爵様に渡した方が良いだろうな。」


 「解った、手紙は確かに受け取った。マーロン伯へ届ける。」


 そう言ってバーツさんは、団長さんからの手紙を受け取った。


 「確実に届けてくれよ、大事な手紙だ。」


 「解っている、全力で取り組むさ。」


 「なら良い、頼むぞ。」


 「了解、ふーやれやれ、ギルドから追加料金を貰わなきゃな。」


 「へっへっへ、ちゃっかりしてるな、冒険者ってのは。」


 手紙のやり取りを終えた俺達は、自警団本部を後にして、広場へと来た。


 ここでバーツさんが俺に声を掛けて来た。


 「ジョー、これから帰るが、その前にお前さんの武器を買い替えてこい。」


 「武器をですか、そりゃ今の俺ではこの剣を扱えませんが、この鉄の剣は爺ちゃんの形見なんですよ。」


 「だが、使えない武器を持っていても邪魔なだけだぞ、その剣は高品質だから売ればかなりの金額になる筈だ。」


 ふーむ、そうか。爺ちゃんの形見はまだダガーがあるし、この鉄の剣を売ってお金に換えて、自分の身の丈に合った武器を購入すれば良いか。


 ★2の武器は今の俺には扱えないらしいし、★1の一般品を買って使い続ければ、いずれ★2の武器も扱える様になるかもしれない。


 よし! 武器屋へ行こう、爺ちゃんには申し訳ないが、形見の一つの剣を売ろう。


 「じゃあ俺、武器屋へ行って来ます。みんなはここで待っていて下さい。」


 「おう、待ってるから早くしろよ。」


 「はい、じゃあ行きます。」


 俺はみんなとは別行動をして、武器屋を探す。


 と、思ったら目の前の看板が武器屋だったので、そのまま店に入る。


 「いらっしゃい、どうしましたか?」


 店員さんが挨拶してきたので、簡潔に答える。


 「はい、この鉄の剣を売って、新しく剣を買おうかと。」


 「左様でございましたか、ちょっとその剣を見せて頂いても?」


 「はい、どうぞ。」


 俺は鉄の剣を店の人に渡した。店の人は俺の剣を一目見て、頷き、こう切り出した。


 「これは見事な剣ですな、これを売って頂けるのですか?」


 「はい、幾らくらいで買い取ってもらえますか?」


 「う~ん、そうですな、この品質でしたら、銀貨80枚といったところでしょうか。」


 な、なんだとー。銀貨80枚だと!? 物凄く高価で取引出来るじゃないか。


 迷う事は無い、爺ちゃん、ごめんだけど、この剣売るから。


 「はい、その値段で売ります。」


 「おお、そうですか、ちょっとお待ち下さい。直ぐにお金をご用意致しますので。」


 こうして、しばらく待っていると、店の奥から店員が戻って来て俺に袋を渡してきた。


 「銀貨80枚でございます、お確かめ下さい。」


 俺は袋の中を確認し、丁度銀貨が80枚あることに納得した。


 「では次に、この店で鉄の剣を買いたいのですが。」


 「はい、勿論武器をご用意できますよ。どれになさいますか?」


 実はもう決めている、壁に掛かった一振りの剣、これは日本刀、サムライソードだ。


 こいつに決めた、この刀を買おう。一般品らしく★1だったのも良い。


 「すいません、この刀を見せて貰えますか?」


 「ほう、お客さん、この刀にご興味が? これは遠い島国で鍛えられた武器でして、切る事に特化した武器です、こちらをお買い上げで?」


 「はい、一目見て気に入りました。この刀を買います。」


 「解りました、この刀は銀貨50枚とそこそこの値段がしますが。」


 俺は無言で銀貨を50枚カウンターに置いた。


 店の人は顔を綻ばせ、ウンと頷き、俺に鞘に収まった刀を渡した。


 「大事にお使い下さい、間違いなく切れ味は良いモノですので。」


 「はい、ありがとうございます、大切にします。」


 店を出る時に、手入れ用の油をサービスで貰って、武器屋を後にした。


 「良い買い物が出来たな、まさか刀が手に入るとは。」


 この刀は大切に使っていこう。


 こうして俺は武器を新調し、みんなの所へ合流した。


 バーツさんからは「ほーう、刀か。悪く無い。」と言って頷いていた。


 依頼も達成したし、後はマーロンの町に帰って手紙の返事を渡すだけだ。


 港町を後にして、俺達は門を潜り外へと出るのだった。






 








 




 



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