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第10話 一本橋の戦い ①




 バーツさんが前方の方へ指差し、みんなに伝えた。


 「見えて来た、あれがリーバー川に架かった橋、リーバー橋だ。」


 俺達の進行はリーバー橋の少し手前で止まった。


 「何か様子が変だ、橋の所で検問の様な事をやってるぞ。」


 バーツさんが指さし、橋の上で何人かの人が居るのを確認した。


 「検問? そんなの俺達が橋を通った時には無かったよな。」


 「ええ、そのまま橋を素通りしたわよ。」


 フォルテとメロディがそんな事を言ったので、バーツさんが怪しんだ。


 「検問ねえ、まあいい、兎に角このまま進むぞ。」


 ここで俺は不覚にも尿意を催してきた、一言言って皆と別行動しよう。


 「あっと、すいません皆さん、俺さっき水を飲み過ぎたみたいで、ちょっとお手洗いに。」


 「わかった、その辺で用を足せ。俺達は先に橋を渡れるか見て来る。」


 「了解です、じゃあちょっと行って来ます。」


 俺は一人、みんなと離れて草むらを探し、用を足す。


 「ふ~~。」


 ふと、草むらの奥に人の足が見えた様な気がした。


 「こんな所で寝てるのかな?」


 人は三人寝転がっていた、服などは着ていない。


 というか、どう見ても怪しい。その三人の近くまで行く。


 「こんにちは。」


 返事が無い、ただの屍のようだ。


 「これ!? マジで死んでる!?」


 マジか! 一体誰にやられたんだ? 


 辺りを見回す、地面に争った形跡は無い。だが遺体をここまで引きずった様な痕跡がある。


 「まさか!」


 俺は遺体の三人を調べる、首に認識票のようなのがあった。


 「ジム、ホッパー、ヤンガス、三人共ロファールの兵士みたいだな。」


 認識票を確認したら、三人の名前と所属が彫られていた。


 「裸って事は、誰かに身ぐるみ剝がされたのか。」


 そして、リーバー橋の検問をやっている兵士は三人。


 フォルテ達の話では、マーロン伯の町に来た時は検問など無かったと言っていた。


 「なるほど、そう言う事か。」


 偽検問がある。当然なのだが、ただの冒険者パーティーなんかを易々と通してはくれないだろう。


 バーツさん達の会話で解ったが、兵士とバーツさん達のやり取りで、どうやら橋の通行料を徴収しようとしているらしい。


 「ははーん、そう言う事か。つまり、奴らは偽者の兵士で、橋の通行料を取ろうって魂胆なんだな。」


 それならば、こちらも考えがある。おそらくあいつ等は山賊だろう。


 なら、容赦しない。する必要もない。


 早速バーツさん達のところへ向かい、合流する。会話が続いていた。


 「ここを通りたければ通行料を払ってもらおうか。」


 「だから、そんなの知りませんよ。以前は無かったんでしょう?」


 バーツさんと検問官がやり取りしている、そんな奴等に払う金は無い。


 「状況が変わったんだ! いいからさっさと出しやがれ!!」


 これまた随分と口の悪い兵士だな、まあ、中身が山賊なのはバレバレだし。


 ここは一丁、即興で乗り切ってみますか。


 俺はゆっくりとした足取りで、検問所に近づく。なるべく大物ぶって、そしてわざと大きな声で検問をやっている人達に聞こえる様に声を掛けた。


 「はいはい! そこまで、お前ら検問作業をやめろ、作業中止! おいそこ、検問作業をやめろって!」


 大きな声と合わせて手をパンパン叩きながら偽検問官に近づく。


 「いーから、早く検問作業をやめろって!」


 「何だ? 何の騒ぎだ!」


 偽検問官達が一斉にこちらを振り向いた、検問官は全部で三人。丁度遺体の数と一致した。


 「検問やめー! おいそこ、検問作業をやめろって!」


 と、ここでバーツさん達の顔をチラッと見て、俺はコクリと頷く。


 それを察したみんなは、一歩下がってこちらの様子を窺う。


 「だから誰だよお前!」


 「街道管理局の者だ、おいそこ、検問やめろって。」


 俺は冒険者ギルドのギルドカードを一瞬だけ見せて、直ぐに仕舞う。


 「街道管理局? 聞いた事ないな?」


 「新設されたばかりなんだよ、おいそこ、検問作業やめろって。」


 「で? その管理局の奴が一体俺達に何の用だ?」


 「責任者誰だぃ。」


 「俺だ。」


 よし、ここで一気に畳み掛ける。


 「ああ、あんたか、ちょうどいい、命令書見せろ。」


 「何? 命令書?」


 それを聞いた偽者が顔を引きつらせる。


 「そうだ、昨日届いてるだろう、それに不備があったんだよ、そこ! 検問やめろって!」


 「昨日? 命令書なんて届いてたっけ?」


 いけしゃあしゃあと、よくもまあ。


 「何、まだ届いてないだと! あいつめ、またドジをやったな、まあいい、今から口頭で伝える、いいか、検問作業を中止、直ちに通常任務に戻れ、だ、そうだ。」


 「なんだと? 通常任務に戻れだあ?」


 「ああ、そうだよ、いつも通りモンスターを橋に近づかせない様にする任務だ。」


 「しかし、いきなりそんな事言われてもな、どこからの命令だってんだ?」


 偽者達も話を合わせてきている、バレてないとでも思ったのかよ。


 「街道管理局だっつってんだろ、おいそこ! 作業をやめろ、バリケードどかしとけ。」


 「しかしなあ。」


 有無を言わさず、俺は次々と畳み掛ける。もう一押し、と言う感じか?


 「わかってる、あんたのせいじゃないよ、悪いのはドジをやったウチのもんだ、上の方には俺からうまく説明しとくからさ、あんたらはいつも通りリーバー橋の警備任務をやればいいよ。」


 「それならそれで構わねえんだけどよ、本当に検問任務が解かれたのか?」


 「ああ、たぶんな、俺だって使いっぱしりだからな、おいそこ、検問作業やめろって、バリケードどかしとけって。」


 「ちょっと信じらんねえな、俺たちゃここで通行料を取っているだけなんだよ。解るだろう? いきなり出て来てはいそうですかって訳にはいかねえよな?」


 よし! 乗ってきた。このまま勘違いしてくれればこっちのものだ。


 「ああ、じゃあ後の事は後からやって来る軍隊に言えばいいから。こっちはこっちで橋を渡らせてもらうよ。」


 「な、なに!? 軍隊だと!? マーロンが軍を出したなんて聞いてねえぞ!」


 「いやあ~、言うの忘れてたわ、山賊がこの橋で悪さしてるからちょっと見て来てほしいって話だったんだよね。」


 「ふ、ふーん。そうかい。」


 白々しい奴。


 「兎に角さあ、俺たちゃ金さえ貰えりゃ良いんだわ。だからあんた等の金を全て寄越しな。」


 「おや? 橋の通行料ではなかったんですか?」


 「いいからさっさと出しやがれ!!」


 こいつ等、とうとう本性を現しやがった。


 「何だジョー、もう終わりか?」


 「はい、即興ではこれが精一杯でしたね。」


 「じゃあ、ここからは俺達の流儀で対処しようかねえ!」


 やはり即興での演技は上手く行かないモノだなぁ、もっと練習を積めば良かったかも。


 山賊達が兵士の装備を剥ぎ取り、自分達が兵士だと偽り、通行料をせしめていた。


 許せん、その腐った根性を叩き直してくれる。


 と言っても、向こうはこちらを殺す気満々だがな。


 やはりそこは山賊という事か、容赦しなくても良いという事だな。


 「ジョー、フォルテ、前に出過ぎるなよ!」


 「はい!」


 「メロディは後ろで待機、隙を見てサポートよろしく!」


 「解りました!」


 さーて、とぼけるのもここまでだな、後は俺達ソードアックスの面々でこいつ等を懲らしめれば良いだけだ。


 「よくも俺達をコケにしてくれたな! 生かしゃしねえぜ!」


 「おいお前等! やっちまえ!」


 「へへへ、女が居るぜ、へへへ、楽しみだなぁ~。」


 それを聞いて素直にやらせるとでも思ったのかよ! 舐めるな!!


 山賊は三人、こちらは四人、だが前衛が三人同士でこっちにはメロディが居る。


 油断などしない、慎重に行く。


 「よし、いくぞ!」


 自分に気合を入れ、俺は初めてのパーティー戦におっかなびっくりしていた。


 上手く立ち回らなくては、仲間の足を引っ張る訳にはいかない。


 俺はフォルテとバーツさんとの前衛ラインに出て、剣を抜き身構える。


 いよいよ戦闘か、怖くないと言えば噓になるが、やらなければやられるという事は理解している。


 なので、やるしかないのだ。






 







 



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