朝
レオンの目覚めはいつも、メイラの「おはよう」ならぬ「起きろ!」の絶叫から始まる。布団の中で夢の世界に浸っていた彼が、突然ズシリと腹に重みを感じ、思わず目を開けると——
「はーっはっはー!勇者よ、貴様の力もこんなものか!さぁ、立ち上がって朝ごはんを食べるのだ!」
メイラがレオンの腹の上に片足をドンと乗せ、まるで戦に勝利した将軍のごとく胸を張って仁王立ちしている。彼女の小さな足が腹にめり込み、レオンは思わず目を白黒させながら、体を少し起こしてメイラを見上げた。
「お、おう……わかった、降参だよ。朝ごはんにありつかせていただきます、メイラ将軍。」
やけくそになったレオンが芝居がかった敬礼をすると、メイラは「ふふん」と鼻を鳴らし、偉そうにうなずいた。
「よしよし、ならばついて来るがよい、ホウキ振り勇者よ!」
そう言い放つと、得意げな笑顔を浮かべながら、メイラは勢いよく部屋を飛び出していった。レオンは布団から抜け出し、ぼんやりとした頭を振りながら、渋々その後に続くことにした。
廊下でのやりとり
廊下に出ると、すでに掃除を始めていたハナがメイラを見つけ、片手を腰に当てて軽く注意を飛ばした。
「メイラちゃん、毎朝うるさく起こさないでって言ってるでしょう?レオンさん、寝てたいのに起きなきゃいけなくなるんだから。」
メイラは一瞬だけ「えへへ」と照れ笑いを浮かべたが、すぐに「うむ、了解!」と真面目な顔でうなずき、今度は隣の部屋のドアに向かって走っていった。どうやら、他の宿泊客も巻き込む気らしい。
ドアをバンバンと叩いたかと思うと、メイラは扉を勢いよく開け放ち、中に向かって高らかに宣言した。
「はーっはっはー!愚民共、起きるがよい!さもないと、朝ごはんの玉子焼きはすべてこの私がいただくのだー!」
寝ぼけた顔で布団から半分出てきた宿泊客が、「もう少し寝かせてくれよ…」「玉子焼きだけは残して…」と弱々しく訴える様子を見て、メイラは満足そうにニヤリと笑った。
そんな光景を目にして、レオンは思わず苦笑する。宿泊客たちは、文句を言いながらもどこか微笑ましそうで、このメイラ式の起こし方が日課になっていることが明らかだった。