少しずつ始まる反応
「じゃあ、今日はこの実験を一緒にやるわよ。準備はいい?」
渡辺美咲先輩が実験台の前で、少し真剣な表情を浮かべながら俺に問いかけた。
「もちろんです、先輩!」
俺は気合を入れて返事をする。
今日は渡辺先輩と二人で、ある化合物の反応速度を測定する実験を行うことになっている。いつもは教えてもらう立場だけど、今日はちゃんと手伝いとして役に立ちたいところだ。
「まあ、最初は簡単な部分からお願いね。私がメインで進めるから、あなたはデータをしっかり記録して。」
「了解です、データ担当は任せてください!」
俺はノートを取り出し、渡辺先輩の動きを見守る。
渡辺先輩は実験器具を手際よく並べて、薬品の計量を始めた。その動きは無駄がなく、さすが先輩という感じだ。俺も負けていられないと思いながら、計測器をチェックして準備を整える。
「先輩、これでよろしいですか?」
俺が準備が整ったことを伝えると、渡辺先輩は頷きながら、試薬を混ぜ始めた。
「うん、いいわね。それじゃあ、反応が始まるまで少し時間があるから、ここで待ちましょうか。」
渡辺先輩はベンチに腰掛け、俺もその隣に座る。
「実験って、待ち時間が長いですね……。」
「そうなのよ。特に反応速度を測る実験だと、じっと待つ時間が多いの。」
彼女は笑いながら、手元の時計を見つめた。
「でも、その待ち時間が退屈じゃないこともあるわよ。例えば……あなたと話をするなら、悪くないかもね?」
「えっ?」
突然の言葉に、俺は少し驚いてしまった。
「別に深い意味はないわよ。単に、こうして実験を一緒にするのって、いつもと違って新鮮だなと思っただけ。」
渡辺先輩は軽く肩をすくめ、微笑んだ。
「そうですね……僕も先輩と一緒にやるのは楽しいです。」
俺は素直に答えた。
「ふふ、真面目に返すのね。でも、真剣に実験に向き合ってくれるのはいいことよ。」
彼女の声には、どこか優しさがこもっていた。
しばらくして、反応が始まった。俺は再び集中して、データを記録し始める。渡辺先輩は実験の進行を丁寧に確認しながら、手際よく作業を続けていた。
「どう?ちゃんとデータ取れてる?」
「もちろんです、完璧ですよ!」
俺はメモを見せながら自信たっぷりに答えると、渡辺先輩は満足そうに頷いた。
「いいわね、これで一通りのデータは取れたわ。後は解析して結果をまとめるだけね。」
「やった、先輩の役に立てました!」
「まあ、今回は簡単な作業だったからね。でも次回は、もう少し難しい部分も任せるつもりよ。準備しておきなさい。」
渡辺先輩は冗談めかして言ったが、その言葉には期待が込められているように感じた。
「頑張ります、先輩!」
俺は力強く返事をして、先輩の横顔を見つめた。やはり渡辺先輩は頼れる存在だ。そして、今日の実験を通じて、彼女との距離が少しだけ縮まった気がした。




