SNSの繋がり
「おーい、おーい、聞いてる?」
級友のユキの声ではっと我に返った。
放課後、級友のユキがスマホをいじりながら、『もう帰ろうよー』と、私の前に座っていた。
ユキとは高校に入学してからの仲なのでまだ1ヶ月ぐらいの半月ぐらいの付き合いなので、この子がどんな子なのか正直よく分からない。
でも、こうして一緒に帰ろうと誘ってくれたりするのが嬉しい。
それにしても…もう放課後?
最近1日がとても長くとても短い。
あれからの私はずっとこんな感じで毎日を過ごしている。
あの日。
コスプレイベントでウルさまのレイヤーに出会ったあの日からの私は何をしてもずっと上の空だった。
あの日、帰りの電車の中で。
推しに巡り会えたユミチィはいつにも増してハイテンションでずっとしゃべり続けていた。
「いやー、見た?私の推し?本当かっこ良かったわ、あんなかっこいい人他にいないわ」
はぐれたユミチィとは、ウルさまと出会ってすぐに会えた。
ユミチィは推しと写真を撮って欲しくてずっと私を探していたらしい。
ユミチィの推しは彼女が騒ぐぐらいありかなりのイケメンレイヤーだった。
透き通るような白い肌もキャラをリスペクトしてるんだろうなって。
私には何のキャラか分からなかったが…。
だけど、正直、ウルさまの方がカッコいいと思ってしまった。
ユミチィにも私とウルさまのツーショを撮ってもらい、その写メをスマホの待ち受け、ラインのアイコン、何ならチェキにして鞄につけている。
何なら、いずれウルさまのアクスタなども作ろうと密かに思っていた。
あのウルさまが幼き日の私を救ってくれてウルさまがどうかは分からないけど、あのウルさまが美し過ぎて。
もうそれだけで充分。
同じ人間とは思えないほどの美しさだった。
小さなお顔、細くてしなやかな顎ライン。
え?本当に人間?何度も思ってしまった。
家に帰って、初めてSNSに登録して、ウルさまのアカウントを探した。
美しいウルさまのアカウントのアイコンは当然ウルさまであったが、驚いたのはフォロワーの数がそんなに多くない事だった。
あんなに美しいのに?
ウルさまを探すに辺り、様々なレイヤーさんのアカウントを見ていたけど、フォロワー数はピンきりではあるが、このレイヤーさんより間違いなくウルさまの方がイケメンなのに!
何でこんなにフォロワー多いの?って思ってしまう人も多かったりした。
取りあえず、『今日はありがとうございました。本当に素敵でした』とリプすると、すぐに返信が来て驚いた。
一言、『ありがとうございました』だったけど、それがすごく嬉しくて。
SNS初めたばかりのフォロワーゼロの人間にこんな風に普通にリプしてくれるウルさまに私はメロメロになったの。
「早く帰ろうよー」
ユキの催促に、ごめんね、と謝りながら席を立った時、ラインが鳴った。
「あ…」
「どうした?」
「隣のフリーターがお弁当持ってこいだって」
「え?」
「今日ビルの警備のバイトなんだって」
10歳ぐらい年上のフリーターはうちの隣の部屋で一人暮らししている。
私が越してきた時からずっとそこにいて、面倒見のいい母親は、『一人暮らしじゃ大変でしょ』と越してきた時からその人世話を焼いていたので、年の離れたダメなお兄ちゃんができた感じになっていた。
「イケメン?」
目を輝かせて聞くリア充のユキに私は首を思い切り振った。
「365日髪とヒゲボサボサの分厚い丸メガネのちんくしゃだよ」