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終末(7)

 祐次は誰もいなくなった病室で目を覚ました。

 カーテン越しに漏れる明かりもなく、非常灯とテレビの主電源ランプだけがポツンと見える。

 祐次はこの『主電源ランプ』が嫌いだ。


「中島さーん。お食事をお持ちしました」

 そんな声が聞こえてから部屋の明かりが点いた。祐次は右目を瞑って看護士の方を見た。


「寝てましたか?」

「ええ。少し」

 祐次は頷いた。看護士は笑顔で申し訳無さそうな顔をした。

 快適な睡眠は、それ自体が『至福の時』と判っているからだ。


「ごめんなさいね」

 祐次は首を横に振る。


「夢を見てましてね」

「あら。どんな夢ですか?」

 看護士は、患者が『どんな夢を見ていたか』を知るのも、大切なことだ。それは診察にも繋がる、貴重な情報なのだ。


「忘れちゃったー」

「おっとっとー。それは残念ですねー」

 祐次が笑って答えたので、看護士は笑いながら祐次を慰めた。

 看護士はワゴンに乗せた食事を指差して、祐次に聞く。


「お食事食べられますか?」

「食べないと点滴ですか?」

 これは駆け引きだ。祐次はあまりおなかが空いていなかった。

 それに、食べて吐くのも嫌だ。酔っ払ったって吐いたことがないのに、酔ってもいないのに吐くのはもっと嫌だ。


「そうですね。食べられないのならチューブという手もありますよ」

「頂きます」

 祐次は即答すると、自力で起き上がろうとした。

 にっこり笑った看護士が祐次の肩を押し、傍にあったスイッチを操作してベッドの角度を変える。


 祐次が頷くとそこでスイッチから手を離し、ベッドに渡した机に食事を置いた。


「あぁ、この野菜ジュースは冷蔵庫に入れておいて下さい」

「はい」

 看護士はにっこり笑って野菜ジュースを取上げると、傍にある冷蔵庫を開けて祐次に振り返った。


「じゃぁ、ここに入れて置きますね」

 祐次は口に食事を入れていたので、首だけ少し前に出す感じで頷いた。何処にあっても良かった。


 祐次は野菜ジュースが大嫌いだったからだ。トマトをすり潰した上に塩味のジュースなんて、祐次の舌は受け付けなかった。


「後で下げに来ますね」

 そう言いながら看護士は病室を出て行った。

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