雨
久しぶりの更新になります。ちょっとのんびりし過ぎですよね(--;)
今回はちょっと刺激的なものになりました。
ドキドキ感を楽しんでいただければ幸いです。
ここはある倉庫。所有しているのはここら一帯で名が知られている魄霸組だ。所有しているいくつかの倉庫の中でここは特別で、仲間内では“顔倉庫”と呼ばれていた。揉め事や諍い等があれば「ちょっとカオ貸せや」と、この倉庫で喧嘩や制裁が行われる、血生臭い場所だった。
そこへ雨降りの中ひとりの男がやって来た。ギィィ…と音がした出入口をスーツの上着を脱いだ男が椅子に座ったまま見やる。
「お疲れっす、木島です。」
「オゥ文雄、やっと来たか。遅かったじゃねぇか。」
別の男が椅子から立ち上がり、目配せして歩きだすと木島がついて行った。
木島がここに来るのは初めてだった。亮汰を何とかして連れ出したい木島だが近づく事も困難な程光汰に邪魔され日頃の鬱憤が溜まっていた。そんなある日拉致計画を思い立った。それは組の先輩達に亮汰の拉致を依頼し身柄を餌に光汰をおびき出して仲間と憂さ晴らしするとゆうものだった。しかし以前から木島は大学に行っておらず単位を落としそうになっていた。そこで大学で研究をしている教授の学会発表前の補佐をすることになり忙しかったので組の人間に拉致を任せる事にした。
木島不在の中亮汰の写真だけを頼りに、大学の近くでターゲットを待伏せて連れ去って来ると光汰をおびき出す餌にビデオ撮影をした。木島は友人にそのコピーを夏木家に届けさせると電話をかけてこの倉庫へ向かっていた。
「まだ眠ってるぜ、あいつ。逆さまに吊ったら暴れ捲るから大変だったぜ」
いかにも面白いといった風に話す男に木島は顔をしかめた。
「逆さまに?…それでどうしたんすか…」
「なんだ、お前コピー見てねぇのか?良く撮れてたぜ。一緒に居たやつも拉致って来たから吊ってリンチ。威勢がよくてよー」
独り言の様に喋りながら男が示した方を見ると縛られたままの裸体が床に転がされていた。身体に無数の痣や傷がある。
しかし木島はその顔に見覚えが無かった。
「人違いっすよ…」
木島はポツリと呟いて、出口に向かった。
『もしもし、光汰?』
少し怯えたような声だった。
「亮汰、今どこだ!」
『え、と…ドロップスって…喫茶店の中だけど…』
「すぐ迎えに行く。絶対動くなよ!」
光汰は通話しながら上着や財布、車のキーを掴むとパソコンの電源を落として部屋を出た。
車庫に続いている勝手口から外に出ると辺りは薄暗く雨の音が騒音のように煩い。光汰は白のキューブに乗り込むと雨の中へと走らせた。
数分前の〈Drops〉――
客がまばらな店内中央の壁際の席にやや疲れた様子で亮汰は座っていた。亮汰の位置から正面が厨房、右側と後の壁からは突き出た飾り棚にオブジェや絵画が並べられている。左側の壁一面は硝子張りになっていて外が見える。外は相変わらずの酷い天気だ。天気予報は昼過ぎから雷雨の予報となっていた。
一向に弱まる気配さえ無い空模様を見ながら何度目か分からないため息をついた。手元のコーヒーカップは中身を三分の一程残して冷たくなっている。
不透明な液体を見詰めると照明の光が見えた。その安定した光が一瞬暗くなった。
亮汰はハッとした。ざわめく店内。カップを握る手が緊張し僅かに震えている。そして地響きのような轟音を聞き、咄嗟にきつく目を閉じた。しかし視界を閉ざした事で不安は大きくなる。急に寒けがして身体が震える。
その時不意に聞き慣れた着信音に気づいた。いつから鳴っていたのか判らなかった。ジーンズのポケットから取り出して通話ボタンを押した。
光汰からだった。いつもの余裕たっぷりの俺様な雰囲気はなく、何か苛々したような焦っているような声だった。
珍しいなどうしたんだろ…。
でも迎えに来てくれるのは有り難かった。亮汰は身体の震えが落ち着いてほんの少し不安も恐怖も和らいでいる事を感じた。
それから少しして光汰が店に入って来た。亮汰の姿を見つけて僅かにホッとした様子で早足で席に向かった。
「亮汰…なんですぐに出ないんだよ」
「ごめん…かみなり…鳴ってて…」
それだけ言うと視線を落とした。
「あぁ…さっきも光ってたな…帰ろ。」
一度外を見て亮汰を促すと2人で店を後にした。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
謎や噛み合わない部分もあったかと思いますが、大目にみて頂きたいです(^_^;)