「油断禁物。」
それからぐったりしている亮汰の身体を解いて縛った跡がついた手首を何度かさすってやる。罪悪感がちょっとだけあったから。亮汰は泣き止んでいて俯いてじっとしている。
左右の胸には銀色に光るリングが入れてある。装飾のルビーが白い肌に映えて、見ているとドキドキした。
2人共2週間前の事を思い出していた。
光汰が腕を巻き付けたまま首筋に唇を押し付けて軽く吸う。
「光汰、放せって…」
「なぁ…ベッド、行こ?」
「っお前なあ!」
身体を捻って腕を振り解き立ち上がるとドアへ向かう。
「待てよ亮汰!」
部屋を出て行こうとする亮汰の腕を掴んで引き留める。
「…………」
そのまま2人は無言で固まり嫌な沈黙が流れる。
その時ドアがノックされた。
光汰が腕を放す。
「ちょっといいかしら?…って、びっくりするじゃないの!どうしたの2人共…」
ドアを開けたのは母親の時子だった。
開けた瞬間目の前で息子達が並んでこちらを見ていたので驚いた。時子は10代で出産した若い母親で、傍から見ると歳の離れた姉弟の様に見える。
「えっ…あ、いや…何でもないよ。どうしたの?」
母親から視線を逸らしながら亮汰が応える。
「…そお?まぁいいわ。ね、下に来て新作ケーキの試食をして欲しいの。」
階下からの甘ったるい空気が部屋に流れ込む。たまに趣味で作るケーキやクッキーの試食を頼まれる。
「それなら美砂ねえさん達の方が喜ぶんじゃねぇ?今日来るんだろ?」
光汰は歳上の従姉妹が子供達を連れて遊びに来ることを昨日聞いていた。
「そうなんだけど、たくさん作ったからみんなで食べましょ」
そう言って時子は階下に降りて行った。母親の姿が見えなくなると浅くため息をついた亮汰をちらっと見る。肩を掴んで振り向かせると素早く唇を合わせた。
「―っ…ぅ、ん…」
舌は使われてないのにすぐ近くで生々しい水音が聞こえる。
「油断禁物。」
ベロッと舌で唇をなぞり口元にちゅっとキスをして光汰は部屋を出て行った。
余りの早業に呆然となり、ひとりになった部屋で呟いた。
「なに…すんだよ…」
読んで頂きありがとうございます。
変なとこで区切ったりしていて読みにくいと思います。
未熟者なんで…m(_ _)m
更新は不定期です。
広い心で見守って頂ければ幸いです。