冒険者チームの来訪
人狼マイフを東側の守りに付けて5日が経ったとき、フェアリーがやってきた。
「申し上げます。マイフ殿が狼を3頭ほど獣人化し、狼隊を組織しました」
僕は満足に思いながら頷いた。
「その様子だと、1人当たり50ポイントかい?」
「そういう計算になりますね。残った50ポイントでナイフやショートボウなどを揃えた模様」
「そういえば、君にも名前があった方がいいね」
そういうとフェアリーは、照れくさそうな表情をした。
「わ、私はフェアリーとそのまま呼んでいただいても……」
「それだと、他のフェアリーと区別ができないし……そうだなぁ」
僕は少し考えた。
彼女は妖精なのだから、植物に由来する名前が好ましいだろう。だとすると……花を意味する名前フローレンスなんてどうだろう。繁栄という意味もあるしフェアリーの彼女にピッタリなはずだ。
「じゃあ、フローレンスでどう?」
フェアリーは恥ずかしそうに笑った。
「カッツバルゲル様が、そう仰るのでしたら……」
本当に彼女は表情豊かで可愛らしい。
そう思っていたら、南側に偵察に送っていた使い魔鳥が戻ってきた。
「ピィ、ピィー!」
「え……冒険者チームがやってきたって!?」
その言葉を聞いたフローレンスは表情を変えた。
「どのようなパーティーですか!?」
「男3人、女2人……ウマのような動物はなし」
そこまで言うと僕は思案した。
「ここに乗り込んでくる……ということはけっこうな腕前だろうね」
「マイフ殿を呼び戻しますか?」
僕は少し考え込んだ。
「いや、彼にはこのまま、東側を守る任を続けてもらおう」
「かしこまりました」
およそ5分ほどで、僕の角や鼻も冒険者パーティーの存在を感じ取った。
報告の通り男3女2の編成だ。ランクはC……一般冒険者クラスと推察できる。
もう少し近づくと、冒険者チーム個々の戦闘力がだいたいだけどわかった。
「チームメイトの強さは、B下位、C上位、C中位、C中位、ひとり弱いな……D上位」
「もし戦闘になったら勝てそうですか?」
「僕の強さは控えめに言ってA中位、君はB上位……周りの土地に被害を与えないように配慮する立場だよ」
姿を見せた冒険者一行は、傷ついた仲間を背負っていた。
なるほど、どこかで仲間が重傷を負い退くこともできないから、安全な場所を探していると言ったところか。
一番の問題は、彼らが善人かどうかだということだ。
リーダーと思われる戦士は、僕を見てチームメイトを手で静止した。まっすぐな目をした好感の持てる青年である。
僕もまた、目配せをしてフローレンスに待機するように命じた。
僕が少しずつ前に出ると、相手方の戦士もまた僕の様子を窺うように歩み寄ってきた。
「俺の名はデイヴィットという。ユニコーン……もし俺の声が届いているのなら……」
「僕のことはカッツバルゲルと呼んで欲しい」
返答すると、戦士デイヴィットは驚いた様子で目を開けた。
「喋れるのか!」
「こう見えても元冒険者でね。今は回復の泉の守り手をしている」
そう答えると、デイヴィットという戦士は頭を深々と下げた。
「た、頼む……仲間を救いたいんだ! 泉の水を飲ませてくれ!!」
僕はデイヴィットという戦士を審査することにした。