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行く手を阻むもの

 吾はすぐに精霊を背に乗せると、森の中を駆けた。

「ところでカッツバルゲル」

「なんでしょう?」

「貴方たちの軍団には、どれくらい手元にポイントがありますか?」

 ダンジョンマスター帳を精霊の手元へと出した。

 確か吾が2335。エストックが1302。マイフが1360だったはず。

「わかりました。ありがとうございます」

 なぜ、このタイミングでマナが気になったのかはわからないが、吾は先を急ぐことにした。


 精霊の守るエリアは、ここから直線距離で2キロメートルほどだ。全速力で飛ばしていけば敵より先に目的地に着けるかもしれない。

 そう思いながら駆けていくと、何やら嫌な空気を感じた。

「止まってください」


 じっと目の前を睨むと、藪の中から血なまぐさい臭いを漂わせた動物が姿を見せた。鷲の頭と獅子の下半身を持つ魔獣グリフォンだ。この魔獣は人間よりも馬肉。中でも一角獣の肉を何よりも好むという。

「このような魔獣が……我が森にいるはずがありません!」

「何者かが隷属させて、魔法か何かで呼び寄せたのでしょう」


 グリフォンは良い獲物を見つけたと言わんばかりに口からはよだれを垂らしていたが、飛び掛かってきたタイミングで、吾は水魔法を顔面に見舞った。

 見立てた通り、グリフォンの頭部は鳥なので骨は脆いらしく、水塊が当たったと同時に首の骨が不自然なほど曲がり、遥か後方に生えている木に背中を打ち付けていた。


 痛みも感じずに昇天しただろうと思いながら先に進もうとすると、グリフォンはぎこちなく起き上がり、首をだらんと垂らしながら体をこちらに向けてきた。

「ならば……」

 グリフォンがゾンビのようによろめきながら近づいてくると、吾は地面を前脚で叩いて地面を隆起させた。

 浮き上がった地肌は、巨大な手のようにうねりながらグリフォンの肉体を飲み込み、そのまま地中深くまで引きずり込んでいく。たとえゾンビ化させたとしても、こうなったら動かすこともできないだろう。



「見事な技ですね」

「ゴブリンパラディンには苦戦しましたからね、同じような敵が出て来た時の対処くらいは考えています」

 そう言いながら走りはじめたが、吾は再び脚を止めることになった。

 今度は20以上の死霊たちが森の中を飛び交っていた。吾らだけなら無視して先に進むこともできるが、小妖精たちを追いかけまわし、捕食しようとしているので放っておくこともできない。


 吾は角を光らせると、なるべくパワーを抑えて水魔法を放った。

 こうすると水塊は聖水の塊となるので、浮遊している悪霊も浄化することができる。首尾よく水は悪霊2体に命中して浄化したが、死霊たちはバラバラに分かれて小妖精へと襲い掛かっている。

「大した足止めだ……!」

 水魔法を放つと同時に拡散させることで、死霊たちを纏めて浄化しようと思ったが、機転の利く死霊は木や岩陰に隠れて吾の攻撃をやり過ごした。どう見ても時間稼ぎをしようとしているのがわかる。


 何とか7体ほど浄化したところで、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「君は……フローレンス!」

 フローレンスは近くに浮遊している死霊を浄化すると、他の死霊を睨みながら言った。

「ここは私にお任せください」

「すまない!」

 この場をフローレンスに任せ、吾は応戦している精霊を見ると、彼女は逃げ回る死霊3体を浄化してから吾の背へと飛び乗った。

 死霊は吾らを追いことはしなかったということは、時間稼ぎのノルマは十分に果たしたということだろうか。何だか敵のシナリオ通りに進んでいる感じがする。


「洞窟に踏み込んだらどうすればいい!?」

「あの白馬の姿を思い浮かべるのです。そうすれば洞窟の先に現れます」

「わかった!」

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