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Sランクパーティー

 冒険者街の出入り口を監視していたトンビは、Sランクパーティーの姿を見て目細めた。

 彼らだけではなく、Aランクチームが3つも同行しており総勢も24名と多い。


 トンビは円を描くように飛ぶと少しずつ冒険者街から離れていき、吾の前へとやってきた。

「なるほど……その様子だと到着まで3・4時間と言ったところか」

 トンビはその通りと言いたそうに頷いた。


 さて、現状の吾が戦力は、冬眠から目覚めたばかりのガガンと妖精フローレンスのみだ。出産の近いエストックやゴブリン対策のマイフ隊を呼び戻すのは下策。さて……どうしたものだろう。

「厄介なことになりましたね」

 ちょうど精霊も姿を見せてくれたので、相談してみることにした。

「今からでも戦力化できそうな者はいますか?」

「まだ、一枚岩の地区の探索はできていません。そうですね……」

 彼女は森や空を見渡していた。


「カッツバルゲル。霧で泉の周辺地域を覆い隠すことはできますか?」

 確かそういうスキルなら、以前に習得している。

「1時間ほど頂ければ……」

「では、すぐに始めてください」


 指示通りに濃霧を発生させると、泉の周辺地域は5メートル先も見えないほどの状態になった。高いポイントを払っただけのことはあり、思った以上の効果がある。

 まあ、トンビや使い魔鳥からの情報も得られなくはなるのだが……と思っていると精霊は言った。

「人間は視覚によって物事を判断する生き物です。嗅覚や聴覚を生かして敵を迎え撃ってください」

「わかりました」


 どうやら、精霊は使い魔鳥が使えなくなることも計算にいれていたようだ。

 ガガンも賛成という雰囲気で言った。

「このくらいの霧の濃さを維持できれば、相手の弓を封じることができそうですね」

 ガガンも吾も接近戦を得意としているし、仲間の中で弓を使う者もいない。

「もう少し霧を濃くしても構わないか?」


 質問をすると、妖精フローレンスは頷いた。

「私なら大丈夫です。植物が近くにあれば周りの生き物の様子はすぐにわかります」

「わかった」

 視界を封じることができれば、人数が多い側の方が仲間を敵と勘違いしやすい。


 時間が十分にあったので、霧を限界まで濃くすると3メートルほどしか先が見えなくなった。今日は風もほとんどないのでしばらくはこのままだろう。

「フローレンス、君は森の中に隠れてくれ」

「わかりました」

 そのやり取りを見て、ガガンは不思議そうに言った。

「先制攻撃は仕掛けないのですか?」

「まだ攻撃しないのには理由がある」

「理由とは……?」


 確率としてはあまりに低いが、Sランクパーティーのリーダーが善人だった場合にはこちらとしても手を差し伸べる必要がある。気のいい豪傑だと偽情報に騙されてしまうことも十分にあり得る。

 説明をすると、ガガンも納得してくれたようだ。

「なるほど。完全にあり得ない……とは言い切れませんな」

「まあ、デクスターとザッカリーがいる時点で、十中八九……交戦することになるだろうがな」


 吾の嗅覚が、冒険者一行の気配を捉えた。あと5分ほどで目の前に現れるだろう。吾もガガンも気を引き締めた。何せ今回はこちら側の戦力が圧倒的に少ない。霧が効果を発揮できなければ全滅も十分にあり得る。

「…………」


 相手方も、吾の気配に気付いたようだ。

 自分がリーダーであることを示すように先頭に立つと、両隣を戦士と思しき連中で固めている。

 慎重な行動にも見えるが、どこか臆病な人物にも思えた。


 間もなく、吾は顔をしかめた。Sランクパーティーのリーダーと聞いていたから、かなりの手練れが来るだろうと思っていたが……Aランクの下位程度のプレッシャーしか感じない。

 ただの不正で今の地位を築いた男だろうか。それとも、厄介なスキルを隠し持っているタイプだろうか?


 敵リーダーは足を止めた。


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