冬将軍の遠征
10月の中旬になると、気温が更に大きく落ちていた。
こうなってしまうと寒さに弱いガガンは表には出られず、住居奥で毛布にくるまってすっかり冬眠していた。
囲炉裏の前で暖まっているピーターやデイヴィットも、入り口から降りしきる雪を見ながら呟く。
「今年は例年よりも早く来ましたね」
「ああ、しかもこの降り方だと……けっこう積もりそうだ」
その言葉を聞き、吾は雪かきと雪下ろしというものを思い出した。
ホエズラーはAランクであることを笠に着て、結局そういう奉仕活動を後輩たちに押し付けていたが、吾だけは頻繁に駆り出されて、よく水をかけて屋根の雪を下ろしていた。
「雪かきも当番制にして、不公平のないようにしないとね」
ピーターたちも納得した様子で頷いていた。
「そうですね。我々もリーダーとして気を付けないと……」
エストックがやってきた。
「男性と女性では、力が違うので女性ばかりという当番にはならないように工夫もお願いします」
言われてみればその通りだと思う。
男女では筋肉の付き方が違うのだから、バランスよく当番が回るように順番を考えた方がいい。
さて、どうしようかと考えたとき、元ギルドの受付嬢のゾーイが吾を見た。
「そういうことなら、私が考えてみましょうか?」
なるほど。ゾーイなら人を見る目も確かだろうし、こういう仕事に適任かもしれない。
「それがいいかもしれない。エストック……紙を用意できる?」
「やってみましょう」
エストックが朽木を錬成術で伸ばすと、紙ではなく薄い板に変化してしまった。
「……失敗しました」
もう一度と言おうとしたら、ゾーイは薄い板を手にとって、満足そうに頷いた。
「この板、使いやすそうなのでこれに書き込んでみましょう」
ゾーイはそう言うと、地面に吾の仲間たちの名を縦一列に書いていき、その隣にアルファベットを記しはじめた。
彼女は10分ほどで6つのグループを作ると、Aグループから順に薄い板にメンバーの名前を書き記した。
「できました」
編成をみると、Aグループには吾。Bグループにはマイフ。Cグループにはピーター。Dグループにはデイヴィッド。Eグループにはエストック。Fグループにはフローレンスとゾーイ。
という具合に、統率力のある人物が必ず1人は入っているのが印象的だ。
ピーターやデイヴィッドも、その出来の良さに唸っている。
「なんてバランスの良さだ……」
「これ、このチームでダンジョン探索も出来るんじゃないか!?」
吾も満足しながら頷いた。
「これで行こう。ピーター……」
「はい!」
「この表をマイフのところに持っていって、2人で部下全員に見せて回ってくれ」
「直ちに……」
ピーターはマイフのいる2つ隣の住居へと向かった。
ピーターとマイフが戻ったときには、頭や体に雪がついており、外も吹雪となっていた。
「ただいま戻りました」
「ありがとう。みんなの様子は?」
「ほぼ全員が賛成しているようです」
マイフが答えた直後に、冷たい風が吹き込んできた。
「それは良かったのだけれど……これからが大変そうだね」




