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10月の到来と新スキル

 10月になると気温もだいぶ下がってきた。

 雪が降るのも時間の問題かと思いながら小生は、まずダンジョンマスター帳を眺めた。

「ん……ポイントが増えてる」


 どうやら吾の霊力が上がったらしく、700ポイントもマナ予算が入っていた。

「カッツバルゲル様」

 フローレンスたち妖精族は、674ポイントものマナを納めてくれた。先月分の繰り越しが672ポイントあるので、マイフ隊へ100ポイント支払っても1946ポイントある。

「今月は何かやって欲しいことはある?」

 妖精たちはお互いを見た。

「木々も本格的に眠りにつくので、今月からは経過を見守りたいと思います」

「わかった」


 エストックの方を見ると、彼女の内政も終わったようだ。

「今月は、1180ポイントほどマナが余りました」

 この様子だと、エストックの方もマナを要求されなかったと見える。

「冬場に備えて、食料を生産するような能力を持つべきかな?」

「それなら、理想的なスキルがありましたよ」

 エストックがエリアマスター帳を広げると、錬金術によって木の皮や枯れ枝から、果実や木の実を作り出すスキルが特集されていた。

 便利な能力だと思って、吾も同じページを見てみるとそのような項目はなかった。どうやら同じマスター帳でも人によって扱っているスキルが違うようである。

「スキルを覚えてくれると助かる」

「わかりました。直ちに……」


 エストックはそう答えると、300ポイントを支払って食料錬成のスキルを入手した。木材錬成のスキルと言い彼女の生産系能力はとても充実している。

 私もダンジョンマスター帳を捲ってみると、川魚を集めるスキルが300ポイントで売られていた。

「本当に、人によって扱っているスキルが違うのですね」

「ああ……何かの役に立つかもしれんし、覚えてみるか」


 吾は川魚を集めるスキルと、濃霧を発生させるスキルを買うことにした。合わせて800ポイントを消費し、残りは1146ポイントとなっている。

「残りは来月分として取っておくか。有用なスキルが出てくるかもしれない」

「そうですね」



 我々が新しい術の練習をしている間も、ピーター隊やデイヴィット隊の家の建設は進んでいた。既に十分な量の建材があったため作業をスムーズに進み、10月中旬になる前には4人~5人1組で休めるほどの小屋が幾つも姿を現していた。

「見てください、カッツバルゲル様……」


 吾はデイヴィットに案内されながら、完成した家の中へと入った。

 彼らの建てた家は竪穴式の住居になっていて、真ん中に囲炉裏があり、地面を深めに掘ってあるので熱が家屋の外に逃げづらい構造になっている。

「よく考えられているね!」

 感心しながら言うと、デイヴィットたちは照れくさそうに笑っていた。

「これ。実は昔からこの地域に住んでいた人の家の建て方なんですよ」

「そうだろうね。最近ここに入植した人たちの家の建て方は、すぐに暖かさが逃げてしまう構造をしている」

「そうなんですよ。奴らは原住民のことをけっこうバカにしたりしてますけど……」


 何だかデイヴィットの言いたいことがわかる気がした。国王や偉い人にやたらとヘコヘコする冒険者ほど、自分と違う肌をした人間や、違う家に住んでいる人間を見下していることが多い。

 まあ、逆に言えば権威に騙されずに人の本質を見極めることは、それだけ難しいということなのかもしれない。

「雪が降る前に家屋が建ってよかったよ。この調子で冬に備えて行こう!」

「はい!」


 少し離れたところでは、エストックが食料を作る練習を中断して、薪となる木材を少女たちが持ってきた枯れ葉から作り出していた。

 冬への備えも急ピッチで進んでいる。

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