ホエズラー、次の地獄の修業へ
どれくらいの日数が経ったのだろう。
俺はやっと白馬に掘り起こされると、体中の筋肉がなくなっており自力では立てないほど弱っていた。
「おい、これのどこが修行なんだよ……弱くなってるじゃねえか!」
そう抗議すると、白馬は予定通りと言わんばかりに笑っていやがった。
「無駄な肉が全てそぎ落とされたおかげで、素晴らしい肉体になっているではありませんか」
俺はふざけんなと言いたかった。ムダどころか重要な筋肉もすべてなくなったうえに、皮膚が病気になっておかしな色になってやがる。
白馬じゃなければ噛みついているところだ。
「おいテメエ……俺様は本当に強くなっているんだろうな?」
「もちろんですよ。そこに落ちている岩を持ち上げてみなさい」
そう言われると、俺は体を動かして岩を持ち上げようとした。しかし、体中の筋肉がなくなっているせいで体がそもそも動かねえ。
一体全体、こんな状況でどうやって動かせっていうんだ! くそ!!
「動かせる訳ねえだろ!」
叫ぶと、白馬は目を剥いて怒りを露にした。
「愚か者が! 私の言っている意味がまだわからんのか!?」
その怒号を聞いた途端に、俺の意識はバラバラに弾け飛んで夢の中へと消えていく。
夢の中でうとうととしていると、前脚で俺を掘り起こす気配を感じた。
ハッとした。どうやら俺は白馬によって起こされたようだ。そして白馬はこう言った。
「無駄な肉が全てそぎ落とされたおかげで、素晴らしい肉体になっているではありませんか」
そのセリフはどこかで聞いた覚えがあった。どこだったか……
考えても思い出せないでいると、白馬は更に言った。
「修行の成果を確認しましょう。そこに落ちている岩を持ち上げてみなさい」
えっ……と思った。何だか先ほど同じような指示を受けた気がする。俺は聞き返した。
「ちょっと待ってくれよ。俺は自分の体さえ支えられないくらい弱ってるんだ。どうやってやるんだ?」
「できないことを私は命じたりしません」
出来ないことはない。と言われても俺は一体どうすれば……?
「強く念じるのです。そうすれば必ずできます」
俺は強く岩が浮くように念じてみた。ちょうど炎を出すような感覚だ。すると、ほんの少しだけ岩が動いた気がした。
「………本当だ!」
「その調子ですよ。頑張ってください」
「ああ……」
更に強く念じると、ちょこっとだけ岩が浮き上がっていた。これはいけると思った。
「さあ、更に強く念じるのですよ」
「わかってる」
意識をしっかりと覚醒させると、俺の腕の血管が浮き出た。よし、この調子……もう少しだ。岩よ浮け……浮かび上がるんだ!
強く念じれば念じるほどに全身から汗が流れ出て、身体が疲れていくのがわかった。
「さあ、もっと強く念じなさい!」
もう無理だと思ったとき、俺の周囲は濃い霧がかかったかのように消えていき、そっと目を開けると、頭から下が地面に埋まった状態で目が覚めた。
そして白馬が薄ら笑いを浮かべながら近づいてくる。
「起きてください。次の修業を始めますよ」
あまりの恐怖に、俺は悲鳴を上げていた。




