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駆け引き

 僕はチームリーダーのマイケルを値踏みしていた。

 闇雲に命を奪うような下賤な輩には見えないし、独自の考えを持つ人物だということはわかる。

 彼もまた、僕を値踏みするように眺めていた。

「…………」

「…………」

「マイケル殿、なにか僕の顔についていますか?」

「いえ。とても立派な角だと思いまして……もし、宜しければ触らせて頂いても構いませんか?」

「いいでしょう」


 フローレンスやマイフは不用意だと言いたそうな表情をしていたが、エストックが視線を送って2人を黙らせていた。

 僕はマイケルに少しだけ近づくと、彼は名のある剣を触るかのように丁寧に角に手を伸ばしていく。

「…………」

 ごくりと唾を呑む音が聞こえてきた。


「水と炎の反属性……メインは水属性ですか」

「その通りです。ところで、今日はマイケル殿はいかなるご用で?」

 そう聞き返すと、彼はどこか緊張した様子で言った。

「実は、この泉の先にある遺跡の奥地への探索をしたいのです。通ってもよろしいでしょうか?」

 難しい用事だと思った。

 泉までは僕の管轄だけど、そこより先は精霊の空間である。彼女がどう判断するのかは僕にも想像ができない。


「わかった。精霊様に取り次いでみよう」

「感謝する」

 僕は目をつぶろうとしたら、背中に精霊の気配を感じた。

「……!!」

 どうやら冒険者マイケルや、仲間たちもその気配に気が付いたようだ。次々と僕の背に現れた精霊に敬礼をしている。

 精霊はじっとマイケル一行を眺めていたが、やがて言った。

「通り抜ける際に、幾つか条件があります」

「な、何でしょう?」

「まず、今後は正当な防衛を除いて、ユニコーンやペガサスを一切襲わないこと」

 マイケルは恐々とした顔をしたまま頷いた。

「私の住処に入ったら……決して後ろを振り向かないこと」

 他の戦士たちも額にびっしょりと汗をかいていた。

「次に、撤収する際は、この石に願うこと……以上です」


 そう言い終えると、精霊は手をかざしてマイケル隊員の人数分の石を手渡した。後で聞いた話では、これは転移石と呼ばれる代物で、使うと森の入口へと直行する代物らしい。

「貴方たちのご武運をお祈りいたします」

 精霊に言われると、マイケル隊の面々は一斉に跪いて胸に手を当てた。

「泉を守る熾天使よ……我らをお守りくだされ!」

 熾天使と言われた精霊は苦笑した。

「私はそんなに偉大な存在ではありませんよ。泉でウマと遊んでいるだけのフェアリーです」


 こんなことを言って謙遜しているが、彼女の実力は低く見積もってもS下位。マイケルが言ったように熾天使と呼ぶにふさわしい人物だろう。

 マイケル隊が立ち去った後、僕はそっと尋ねてみた。


「取り付いでおいていうのもなんですが……彼らは無事に戻って来れるでしょうか?」

「あれほどまっすぐな魂の持ち主なら、9割がたは大丈夫でしょう」

 精霊はそういうと、まっすぐに泉の北側を眺めた。

「あの水辺は……黄泉の国と繋がっていますからね。下手な魂を向かわせると鬼化したり、黄泉の悪霊たちに食いつくされたりします」


 要するに僕の真の目的は、その危険なダンジョンに向かわせる魂を選別する役割も担っているというわけか。なぜ精霊がこの場所にこだわるのかわかる気がした。

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