マイケル隊登場
エストックが上位ユニコーンになって間もなく、僕は南側に新しい使い魔鳥をつがいで配置した。
子育て中の鳥に偽装しておけば、さえずり合っていたり巣から飛び立っても不自然に見えないと思ったからだ。
サービスとして雛鳥たちもセットで付き、残りポイントは218ポイントになった。
「これで不意打ちを受ける確率も下げられたね」
「これからは、子育てのことを考えないといけませんし……備えは十分にあった方がいいですね」
エストックはそう言いながら自分の腹部を見ていた。
今の段階で気づく者は多くはないが、彼女の中には新しい命が宿っている。彼か彼女かはまだわからないが、生まれてくるころまでには、安全に跳ね回れるような土地にしておきたいものだ。
そんなことを考えていたら、マイフ率いる狼隊が近づいてくるのを感じた。
「カッツバルゲル様、ただいま戻りました」
「お帰り」
「フローレンス殿の依頼通り、森の東側のゴブリン残存部隊をせん滅してきましたが、ゴブリンパラディンの姿はありませんでした」
狼と同等の嗅覚を持つマイフ達が言うのだから、ゴブリンの王はとっくに逃げ出した後ということなのだろう。だとしたら、これ以上の探索は必要ない。
「お疲れさま。これで森の東側を随時警備する必要もなくなったな。しばらくはここでゆっくりして行ってくれ」
そう伝えると、マイフは「ははっ」と言いながら頭を下げてくれた。彼の頑張りのおかげで収入も増えたし、しばらくの間は体を休めて欲しいものである。
妖精フローレンスも、マイフの討伐成功の報告には大いに喜び、回復の泉で水浴びをすることを勧めていた。彼女は実質的に精霊の分身のような存在なので、マイフたちも安心して恩恵にあずかれるというものだ。
「これで、心正しい冒険者しかこなければ……言うことはないんだがな」
僕はどこか遠くを見ながらそう呟いていた。
間もなく、南側に放った使い魔鳥が飛んでくると、耳元で冒険者一団が来たことを告げていく。どうやら、今度の冒険者チームは7人のようだ。
魔法戦士をリーダーに、戦士、槍使い、弓使い2人、魔導士2人という編成か。
エストックも笑みを消して僕の側に近づいた。
「この気配……まさかとは思いますが……」
「本物のAランクチームだろうね。においや雰囲気……脚運びの仕方でわかる」
僕は内心で、ユニコーンハンターが来たかもしれないと思った。
考えてもみたら、これほど多くの冒険者チームに制裁を加えていたのに、よく今日まで目を付けられなかったと思う。自分からユニコーンに返り討ちに遭ったという話をする冒険者などいないが、Aランクチームが立て続けに負けている訳だから、嫌でも噂になるだろう。
更に近づくと、強さの内訳がはっきりとわかった。
魔法戦士A中位、槍使いA下位、魔導士A下位、戦士B上位、弓使いB上位、弓使いB中位、魔導士B中位か。今まで出会ったパーティーの中で最も強力なチームだ。
ちょうど水浴びを終えたマイフ一行に目配せすると、彼らは僕やエストックの両脇を守るように並び、今回は妖精フローレンスにも、リザードマンのガガンの背後を守るように飛んでもらった。
僕がA中位、エストックA中位、マイフA下位、ガガン・フローレンスペアA下位、マイフ隊員B下位3人、C上位6人。
ホーンハンターと思しきチームも、こちらに戦力が揃っていることがわかったらしく、リーダーと思しき魔法戦士は仲間に「手を出すなよ」と合図をしていた。
僕もまた、仲間たちに同じように合図を送った。
そして、相手チームのリーダーが近づいて来た。
僕もまたゆっくりと相手を刺激しないように歩み寄る。
「…………」
「…………」
「はじめまして。マイケルと言います」
「高名な戦士団とお見受けしました。僕はカッツバルゲル。この泉を守る者です」
相手は手を僕は右前脚を上げて握手をしたが、懐にはナイフを忍ばせるような対談が始まった




