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ゴブリン討伐に関して

 ピーター隊とデイヴィッド隊が戻ったのは、夕暮れ時になったときだった。

 彼らは巣穴の中に突入し、戦利品を得ることに成功したようだ。

「この様子だと、だいぶ連中に打撃を与えてくれたようだね」

「ああ、以前に比べて連中の警備も薄かったよ」

「噂のゴブリンの王の姿も見なかったしな。旗色が悪いから逃げ出したのかもしれない」


 そう言われてみれば、この前はホブゴブリンを3体ほど撃破したし、マイフもかなりの戦果を挙げている。

 ネズミ並みの繁殖力といわれるゴブリンでも、こう立て続けに戦力を失えば、立て直しは難しいのかもしれない。

 デイヴィットはピーターを見た。

「明日で、完全にゴブリンを壊滅させよう!」

「ああ、そうすればこの地域も平和になる」

 次の出撃は、僕も同行して手伝おうかと思っていたら、遠くから声が響いた。


「そりゃ困るな! モンスターを根絶やしにされたら、俺たちの仕事もなくなっちまうじゃねえか!」

 デイヴィットとピーターは振り返ると表情を変えた。

「ご、ゴメス隊……!」

 デイヴィットやピーター隊員たちはごくりと唾を呑んだ。


 確かに、このゴメスという冒険者は他の戦士とは違う雰囲気を纏っていた。

 そもそも身長が190センチ近くあり、腕や足には鍛え上げられた筋肉で満たされ、戦傷と思われるものがあちこちについている。

「…………」

 ホエズラー。ジェームズと比べても、このゴメスという戦士は頭一つ抜けた実力を持っていることは明白だ。

「ゴブリンを残らず退治してくれないと、僕が困るんだけどね」

 そう不満を口にすると、ゴメスは二っと笑った。


「全滅されると俺様が困るんだよ……これは参ったな」

「参ったね」

 そう笑いかけると、ゴメスは舐めるように僕の体を眺めてきた。

「お前、なかなか強そうだな……」

 どうやらむこうも僕の実力をある程度見抜いているようだ。どこか楽し気に両指の関節を鳴らすと続きを言った。

「俺様と勝負して決めるってのはどうだ? もし俺が死んだら死んだで構わん」

 なるほど。正真正銘の達人……Aランク冒険者との一戦か。僕はすぐに頷いた。


「それが一番、後腐れがなくていいかもしれないね」

 そう答えるとゴメスは嬉しそうに笑い、ゴメス隊員たちは動揺した。

「マジかよ……」

「ゴメスさんと一騎打ち!? ありえねえ!!」

「あの馬……ミンチになっちまうぞ!」


 そしてデイヴィットとピーターの顔も真っ青になっていた。

「カッツバルゲルのアニキ……いくらなんでも相手が悪いですよ!」

「デイヴィットの言う通りです。相手は……」

「他の戦士たちが手を出さないように、君たちは見張っていて」

「……」


 僕と向き合うと、ゴメスは剣を構えた。

「じゃあ、行くぜ!」

 その一撃を角で受けると、僕の前脚は地面にめり込んだ。

「今のは挨拶状だ……俺様の剣は……」

「隙あり」

 僕の魔法は角先から発射されるため、ゴメスは至近距離から水塊をもろに受けていた。

「はぐぼがご!?」


 彼はA下位の実力者なので軽い脳震盪で済むだろう。というかゴメスでなければ、こんな至近距離からの水魔法なんてぶつけられない。

「い、一撃……」

「ウソだろ。ゴメスさんだぞ!?」

「不用意にユニコーンの角の前に立ったらダメって、彼に教えてあげて」

 そう伝えると、ゴメス隊の隊員たちは黙って頷いた。

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