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謎の白馬のささやき

 俺たちはあのピンチを無事に切り抜け、更にCランク任務もこなすことができた……ことまではよかったんだが、妙なウマを仲間に入れることになっちまった。

 桶に水を入れて持っていくと、そのウマは納屋でくつろいでやがった。


「持ってきてやったぞ」

「ご苦労さまです」

 な、何だかカチンとくるヤローだ。何だよご苦労様って。変に敬語を使っているからより上から目線が鼻につくんだよ。

 イライラしながら桶を差し出すと、この白毛は俺をジロジロと眺めてきやがった。

「な、なんだよ?」

「いえ。相変わらずおもしろい表情をなさるお方だと思いましてね」

 ま、ま、まじでぶん殴るぞてめえ! いや、でも待て。俺は前に役立たずを追い出したから豪い目にあったじゃねえか。我慢だ!

「殴りたいと思われるのなら、感情の通りになさればよいではありませんか」

「ざけんな。同じミスを何度もするほど……俺だって愚かじゃねえ」


 ゆっくりと白い眼が俺を映した。

「何が事情がおありのようですね。よろしければ話して頂けませんか?」


 俺はそのウマに、ありのままを打ち明けた。

 冒険者パーティーを結成当時に、俺は野生馬を仲間にしたこと。そいつは思いのほか有能でチームも順調にランクを上げて行ったこと。

 活躍すればするほど、上の階級の奴らに荷運びウマのワンマンチームだと嘲笑されたこと。

 そして、毎回のようにお節介をやくウマに嫌気がさしていったこと……などだ。


 その白馬はじっと俺の話を聞き入っていたが、やがて頷いた。

「そして、そのウマを追い出してしまったから……上手くいかなくなったと」

「そうなんだ。結局は嘲笑していた連中が正しかったって笑い話にもなんねーことだよ」

「ふむ……その中で一番悪いのは、嘲笑している連中ですね」


 俺は意外に思いながら白馬を眺めた。いや、これってどう見ても悪いのは俺じゃないのか?

「実力を付けてきたパーティーをいびり、間違った判断をさせ、頑張ったそのウマにもご主人様にもとても不愉快な思いをさせた。そして自分たちはのうのうと今の地位で甘い汁を吸う」

「いや、でもよ……俺たちだって……」

 そのウマは俺の言葉を遮るように凝視し、そして満面の笑みを浮かべた。


「それは、ホエズラー……君が真面目過ぎるからそう思うのです。そういう邪な連中に必要なのは鉄槌なのです」

「て、鉄槌!?」

 その言葉に俺は寒気を感じた。いくらなんでも悪口を言っていただけのヤツに鉄槌って、怖すぎじゃねえのかこの馬は。

「その表情、もしかして私は度が過ぎることを言っていると思いましたか?」

「え、いや……その……」

「そんなことはありませんよ。そもそも言葉というものは時として刃物以上の威力を発揮するものです」

 その目が不気味な光を放っているように見えた。


「よく考えてください。誰かが何気なく発した一言が、全く無関係な人間の感情を大きく煽ることなどしょっちゅうあります。広がった噂は国ひとつを滅ぼすことだってあるのです」

 俺が唾を呑むと、白馬は言った。

「悪口を言って、君を追い込んだ連中を排除しましょう。刃物は使わずに言葉によってね」

「ど、どうやって……?」


 白馬は顔を近づけてきた。

「この前、おもしろい話を耳にしました。古参のAランク冒険者チーム、ジェームズ隊が敗走させられたそうです」

「あ、あのジェームズ隊が!? 一体、誰に!?」

「ダンジョン奥の密林に住む、カッツバルゲルというユニコーンの軍団です」

 更に白馬は首を伸ばして、小声でささやいて来た。

「悪口を言った連中をそそのかしてカッツバルゲルにぶつけるのです。そうすれば君は労せずして復讐を遂げることができる」

「な、なるほど……」

「悪口を言った連中を調べましょう。どの順番で送り込むのかが重要になりますからね」

「わかった……いや、わかりました」

 俺はぐっと手のひらを握りしめていた。

 そうだよな。俺自身の力がイマイチでも、AやSでふんぞり返ってる奴らが弱れば相対的に俺が強くなるってワケだ。


 俄然おもしろくなってきたぜ!

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