滞在を許可できないパーティー
ピーターチームは泉の側にある原っぱで野営の準備を整えていた。
「ここ、なかなか広い場所だな」
僕も頷きながら言った。
「そうだね。飼い葉代わりの草も十分あるし、たまにノウサギとかも迷い込むんだ」
「ノウサギもここなら身を隠せて食事もできるな」
ピーター隊の女性隊員もテントを広げながら言った。
「畑付きの小さな村があると、ノウサギも喜ぶかもね!」
「いっそのこと集落でも作っちまうか?」
そう言いながら笑い合っていると、別チームの気配を感じた。
気配を探ってみると、今度は5人組のようだ。
ん……この雰囲気や風に乗って運ばれてくるにおいには覚えがある。確か、Aランクチームのジェームズ隊だ。
僕はすぐに目配せをしてガガンには場所の死守を命じ、残ったメンバーには身を隠すように指示した。
姿を現したジェームズは、リザードマンのガガンや僕を見ると険しい顔をした。
「何ですか……この魔物たちは」
僕たちを見下しているようなので、今までになく強くけん制することにした。
「ここから先は、泉の精霊が統治する聖域です。これ以上先に入りたければ僕の審査を受けてください」
そう伝えると、ジェームズは馬鹿にしたように両手を上げた。
「泉の精霊ねぇ……この世界の支配者は絶対神のみですよ。他の神や精霊なんてものは所詮はまがい物……いいえ、カスと呼んだ方がいい」
「聞き捨てならん言葉だな。ちっぽけな人間風情が」
ガガンが鋭く睨むと、ジェームズ隊の隊員たちは身を引いていた。
「おもしろい。貴方たち……この礼儀知らずな獣どもにAランクチームの強さを教えてあげなさい!」
ジェームズ隊の隊員たちが襲い掛かってくると、森の中から魔法が飛んできた。
片方はフェアリーのフローレンスが放った風魔法、もう片方はユニコーンのエストックの放った地魔法だ。
彼女たちはジェームズ隊の出鼻をくじくと、戦列へと加わった。
「くそ、伏兵がいるとは……」
僕はジェームズを、ガガンは敵戦士を、フローレンスは敵魔導士を、エストックは敵弓使いを相手にすると、敵戦士が1人余った。
「へへ……俺様がフリーだぜ!」
そう言いながらフローレンスに襲い掛かろうとしたが、僕は地面に落ちている石をぶつけてけん制した。
「ぐお……器用なことを……だが」
再び戦士は立ち上がったが、今度はガガンの尻尾攻撃を受けて転倒した。
「こ、こいつら……だが」
再び戦士は立ち上がったが、3番目にエストックのツブテ攻撃に巻き込まれた。
「がは……げへ……くそ、だが!」
再び戦士は立ち上がったが、4番目に待っていたのはフローレンスの範囲系風魔法のオマケだった。
「お、おのれえ……」
戦士は懲りずに立ち上がったため、僕は後ろ脚で蹴りを入れてノックアウトした。
「ごがごごごががが……がほら!?」
その戦士が倒れたあと、僕はジェームズのアゴに蹴りを見舞って戦闘不能にし、フローレンスも敵魔導士に飽和攻撃を見舞ってノックアウトし、ガガンも圧倒的なパワーで突き倒し、エストックも相手弓使いに矢を撃ち尽くさせた。
その様子を物陰から眺めていたピーター隊は、青ざめた顔をしていた。
「あ、あの……恐ろしいジェームズ隊が……」
「まるで子供扱いだ」
さすがにピーター隊のメンバーは、我々が力半分で勝利したことを見抜いていたようだ。
リザードマンのガガンはこちらを見た。
「あ、あのー?」
「どうしたの?」
「今の敵、本当にAランクチームなのですか?」
ガガンは不思議そうに聞いて来たので、僕は敵の力量を解説することにした。
「冒険者チームのランクは、過去にどれだけ依頼をこなしてきたのかという実績によって決まる」
ガガンは頷いたので、僕は話を続けた。
「つまり、今の冒険者たちのように、後輩たちを脅して実入りの良い仕事ばかりをこなす連中も、Aランク以上のチームには一定数いるのが現状なんだ」
ちなみに双方の戦力は……
僕はA中位。ガガンはA下位~B上位。フローレンスはB上位。エストックもB上位。
ジェームズはB中位。袋叩き戦士B下位。戦士はB下位~C上位。魔導士C上位。弓使いC上位……という具合だった。
実力に不相応な地位にいる点、今までの発言や行動、僕が冒険者時代から耳にしていた噂話などと一致する所も考慮し、ジェームズ隊は泉への出入り禁止とした。




