ユニコーンの牝馬
間もなく、保護したユニコーンが姿を見せた。
「…………」
「…………」
彼女の栗色の毛並みは太陽の光を反射し、金色に光っていた。この様子だと僕よりも年齢は低いと思われる。
そして角は白く、長さは40センチメートルほどだ。体も一回り小さく450キログラム前後と見える。バトルタイプというわけではないが弱くもない。というのが彼女を見た正直な感想だ。
「危ないところを助けていただき……ありがとうございます」
「大変な目に遭ったね。でも、僕の領内で連中は好き勝手にはできないから安心して」
そういって微笑みかけると、彼女も安心したようだ。
「僕の名はカッツバルゲル……君の名前は?」
「エストックと申します。カッツバルゲルさんは……この泉の守護者なのですか?」
僕は頷いた。
「ついこの間、なったばかりだけどね」
何か視線を感じると思ったら、いつの間にか精霊が姿を見せていたようだ。牝馬エストックも驚いた様子で精霊を眺めている。
「あの、貴女様は?」
「泉の精霊です。エストックさん……もし行くアテがないのなら、カッツバルゲルを支えてあげて頂けませんか?」
エストックは微笑んだ。
「私ごときでよろしければ」
僕はエストックの角に興味を持った。彼女はどんな属性なのだろう?
「僕は水と炎の加護を得ている。君は?」
「反属性とは珍しいですね……私は、大地の加護を得ています」
大地属性……これはいい仲間を得たものだ。
地属性魔法は発動こそ時間はかかるけど、威力と防御力に定評がある。それに植物の成長を促進する魔法もあると聞く。
精霊もまたエストックを眺めた。
「どうやら彼女も高い霊力を持っています。泉や大岩が見つかれば守護者として任命したいですね」
確かに、彼女の体から溢れ出るオーラを数値に直すと……マナ350前後と考えられる。これだけの霊力があれば、多少の荒れ地を掴んでしまったとしても十分にやっていけると思う。
その直後に使い魔鳥が飛んできた。
「ピィ……ピィ!」
「東側にゴブリンの一団を発見!? 数は?」
「ピピィ!」
「ゴブリンナイト1、ホブゴブリン3、一般ゴブリン60……わかった」
その報告を聞いたエストックは不安げな顔をした。
「恐らく、私を捕まえに来たのですね……」
僕は精霊を見た。
「精霊様。マイフ隊の手には余ります。僕も救援に向かってよろしいでしょうか?」
精霊は少し不安そうな顔をしたが、エストックとフローレンスを眺めると頷いた。
「2人を守備に残して頂けるのなら、許可しましょう」
僕は精霊の判断に首を捻りたくなった。
森は精霊の力の源である。それが襲われるかどうかという状況で、泉の警護に人員を回す判断はどうなのか。なぜ彼女はこの泉にこだわるのだろう?
いや、ここでグズグズと言い合いをしていたら、本当にマイフ隊の救援が間に合わなくなってしまう。
「わかりました!」
僕は東側へと走りながら思案した。
自分自身の戦闘能力はAの中位クラス。マイフはAの下位からBの上位と言ったところ、他の狼たちの腕前はわからないが、ゴブリンたちには頭数というアドバンテージがある。
急いで合流しないと、数の暴力で各個撃破されてしまう!




