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戦士デイヴィット

 デイヴィットという戦士に角を近づけると、彼の半生が見えてきた。

 どうやら彼は戦災孤児だったようだ。小さい頃に村は焼かれ、幼い妹と2人きりで歳の離れた兄の元で修業を受けて冒険者となった。

 ちなみに妹は、後方から狩人として兄を支えているようだ。


 彼は弱い者のために剣を握ることをポリシーとしており、所属する冒険者ギルドでも、本当に困っている人を優先して助けることを有言実行している。

 そして仲間たちも、そんなデイヴィットの人柄に惚れてついてきているようだ。


 そこまで見ると僕はため息をつきたくなった。どうしてこのチームに僕は巡り会えなかったのったのだろうか。彼らと一緒なら、もっと役立つこともできただろうに……

「善い魂を持っているね……泉の水を飲むことを許そう」

 そう答えると、デイヴィットたちは喜びの声を上げた。

「ただし、そこで負傷している人はダメだ」


 デイヴィットたちだけでなく、後ろから話を聞いていたフローレンスさえも驚きの声を上げた。

「な、何でだ!?」

「傷が深すぎる。僕が直接治療しないと間に合わない」

 デイヴィットは表情を変えて傷ついた仲間を見た。既に彼の生命力はDランクの下位くらいまで落ちている。

「そこに寝かせて」

「は、はい!」


 傷の止血自体は、中級ヒーラーなら問題なく治せるものだったが、この治療を難しくしているのは、病原性の邪気が体中に数多く入り込んでしまっていることだ。

「……これを治すにはユニコーンの秘薬が必要だな」

「ユニコーンの秘薬!?」

 デイヴィットは身を乗り出していた。

「そんなにヤバいのか!?」

「うん。傷を受けた時に厄介な邪気がかなり体内に入り込んでいる」


 僕はエリアマスター帳を開くと、ユニコーンの秘薬のページを開いた。

 ポイントは100か。普段の僕なら人間にここまで義理立てはしないのだが、彼らは特別……そう思えるほど魅力的なパーティーだ。

「…………」

 僕は100ポイントを消費して、ユニコーンの秘薬を出した。


 出てきた錠剤は、ゆっくりと苦しむ冒険者に近き、その口へと吸い込まれていった。

 僕は冒険者の身体に、疲れをケアするために体力回復のヒールをかけた。


「これで、後は経過を待とう」

 そう答えると、デイヴィットは感謝した様子で深々と頭を下げた。



 そして翌日。その戦士は見違えるように顔色がよくなり、戦闘力もC上位まで回復していた。

 お祝いとして、僕は泉の隅に設けた水たまりに入って炎魔法で湯を沸かし、冒険者一行と共に入浴していた。

「ありがとよユニコーンさん。アンタの出してくれた薬を飲んでから、すっかり体が楽になったぞ!」

「君の日頃の行いがいいことがわかったからね。ただ……」

 僕は元冒険者として少し釘を刺そうと思った。

「戦いで無暗に突っ込んではダメだよ。常に仲間との連携を考えながら戦わないとね」


 そう念を押すと、その戦士は参ったなと言いたそうに苦笑していた。

「俺だって二度と痛い思いは御免だよ!」


 デイヴィットチームは、十分に疲れを取ると帰路につく準備をはじめた。

「ありがとうカッツバルゲル。君が手を差し伸べてくれなければ俺たちは全滅していたかもしれない」

「どういたしまして。ただし……僕が受け入れるのは善人だけ。それも僕が独断と偏見で判断する」

 そう言うと、デイヴィットは苦笑した。

「わかってるよ。俺たちの剣はいつでも弱い立場の人々を守るためにある!」


 デイヴィットがそういうと僕らは笑い合った。人間も捨てたものではないかもしれない……

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