008 戦い
ここはどこだ?
俺は確か、太陽を助けに行こうとして、でも全く動けなくて……
いつの間にか体が自由になっている。そして周りの風景が白一色だ。
ここは……空??
横を見ると翼のようなものが羽ばたき、前を見ると長い首。そして背中には……柔らかい感触??
「あっ、気づきましたか?お怪我はありませんか?」
後ろを振り向くと、青いローブを着た銀髪の美女が俺のことを抱きしめている。いや、支えているのか……
って、どういう状況だ!?!?
「あっ、あまり暴れないでください。落ちたら死んじゃいますよ?」
「あっ、すまん……
あの、今どういう状況なんだ?」
さっきまで地面に転がっていたはずなのに、何という急展開。頭がついていかない。
「私の名前はマーレ。この子……このドラゴンはルーラです。里穂が注意を引きつけてくれた間に、あなた達を転移させたのです。」
ドラゴン?転移??
聴き慣れない言葉に頭が混乱する。俺、ずっとサッカーしかやってこなかったからなぁ。
「マーレ……さん?俺と一緒にいた3人は……」
「大丈夫、全員無事ですよ。他のドラゴンの背中にそれぞれ転移しています。
こんなに首尾よく行ったのも、里穂の魔法のおかげです。本当に助かりました。」
よかった。何とか危機を脱することができたようだ。
しかし、なんで里穂が魔法を?そもそも魔法ってなんだ??
しかし、はっきりしたことが一つある。
ここは間違いなく…俺たちの住む世界ではないということ。
間違いなく異世界だ。
ガキン!バリバリ……ドーン!!!
様々な音が下から聞こえて来る。
さっきまで俺達を捕まえていた坊主達と、マーレさんと同じ青いローブを着た人達が地上で戦っている。
人数としては、青いローブの人達が倍以上多い。だが、坊主達は一歩も引かずに戦いを繰り広げている。
戦っていると言っても、殴りあったり銃を撃ち合ったりしているわけではない。
手から稲妻や炎を飛ばしたり、剣や盾をどこからか取り出して戦っているのだ。
坊主達が4人で何かを呟いている。と、次の瞬間、炎の竜巻がこちらに向かってきた。
「あぶない!!」
「大丈夫!しっかり捕まっていてください!イージス!!」
マーレさんが呪文のようなものを叫び、左手を前に出した。すると、巨大で神々しい盾が現れ炎の竜巻の軌道を変えた。
「やはりやつら、かなりの手練れですね。あれだけの魔法を短時間で打てるなんて。」
「あいつらはなんなんだ?魔法って?」
「あなた、名前は?」
「海斗です、本田海斗。」
「そう、海斗というんですね。海斗、今は詳しく説明できないけれど、やつらはこの世界を侵すもの。捕まっていたら、大変なことになっていましたよ。」
世界を……侵すもの。当然のことだが、聞いたことはない。
ただ、良くないものだということだけは分かる。
地上での戦いは熾烈を極めているが、人数の差もあり、徐々に坊主達が押され始めた。
数人は倒れたまま動かない。中には片腕を失ったり、血を流して倒れている人達もいる。
「あっ、あいつは……」
太陽を蹴り飛ばした坊主が空に吹っ飛び、地面に叩きつけられ動かなくなる。
拘束されている時は、殺してやりたいくらい憎かった相手。
でも……いざ目の前で命が消えるのを見ると、ここまでする必要があるのか、と思ってしまう。
「海斗、あなたは優しいですね。」
えっ、心が読まれた?これも魔法なのか?
マーレさんは俺の顔を見ながら少しだけ笑顔を見せる。その美しさは、まるで妖精みたいで胸がドキドキする。
「魔法ではありません。海斗、あなたがわかりやすいんです。
この光景……どう思いますか?」
「俺は……俺達が今までいた場所では、こうやって急に命が奪われることなんてほとんどなかったから……正直戸惑ってます。」
「実は……あなた達が他の世界から来たことは知っています。でも、私と私の父上とごく少数の人しか知らないことなので、あまり周りには言ってはいけませんよ。
その世界がどんな世界かまでは知りませんが……きっとすごく平和で優しい世界なんでしょうね。」
大きな雷撃と共に、青いローブを着た女性が倒れた。
マーレさんの顔がふっと曇る。
「今倒れた子……あの子は私の後輩で名前はサヤ。12歳です。とても優しくて、優秀で、みんなに愛されていました……
この国は……ううん、この世界は戦いばかりです。昨日まで笑顔でお話ししていた人が、急に命を奪われる世界です。
それでも、戦い続けなければ、大切な人達を守れないんです。
平和のためには……戦うしかないのです。」
マーレさんに返す言葉が全く思い浮かばない。
今までにどれだけ危ない場面に出くわしたのだろうか。どれだけ多くの仲間を失ったのだろうか。
銀髪の美女……いや、よく見たら俺達とそれほど年齢は変わらない少女だ。
この小さな肩に、どれだけの重荷を載せているんだろうか…想像もできない。