撫子令嬢のフラワーアレンジメント
お店に飾るお花を生けてほしい。
それがリーズのお願いだった。
「お花ですか?マダムはどんなお花がお好みですか?」
香子が尋ねる。
「わたくしはお花の事はあまり詳しくないので、香子様にお任せしますわ。」
香子は店内を見て回り薔薇の花の前で立ち止まる。
「すみません」
香子は花売りの少女に声かける。
「こちらの白い薔薇の花を1本下さる?」
「はい、かしこまりました。」
「香子様、一本だけで宜しいのですか?」
傍で見ていたリーズが疑問に思う。玄関に飾ってあったものには複数の花が飾られていたのに。
「これは真ん中に持ってくる主役ですわ。周りを彩る花はこれから選びますわ。この花とあとこちらも頂けます?」
香子は他の花を選んでいく。
「ありがとうございました。」
買い物を済むとお店を後にした。
香子はリーズのお店の作業台を借りて花を生ける。今日はお客様も少なくサリーもお咲も休んでいる。
カランカラン
来客を告げるベルが鳴る。
「お客様だわ。わたくしちょっと行ってくるわ
。」
リーズは下に降りていく。
「いらっしゃいませ。あら、月子様。」
お客は月子であった。
「ちょっと、マダムどういうことよ!!」
月子はリーズに詰め寄る。
「うちに来るお客様から聞いたのよ。」
月子が働く喫茶店に来たお客さんが話していたのだ。マダムリーズが店をやめて華族の令嬢とイギリスに行くことを。
「どうしてあの貴婦人の言うこと聞いたんですか?次の映画、主演オーディション最終審査まで行ったのに。マダムがいなくなったらオーディションのドレスどこで買えばいいのよ。」
「月子様、とにかく落ち着いて。」
リーズは月子を座らせる。
「月子様、まだわたくしは辞めると決まったわけではないのよ。」
リーズは説明する。栄子とファッション対決することになったことを。
「わたくしは負けたら彼女のお嬢様の専属デザイナーとしてイギリスに行くわ。だけど勝てばお店は今まで通りですわ。」
「マダム、お花ができましたわ。」
香子が二階から降りてくる。お花を生けた花瓶を手にして。
「そうね、こちらのテーブルに飾りましょう。」
香子はテーブルの真ん中に花瓶を置く。
「これ、貴女が生けたの?」
「はい。」
花瓶には白い薔薇が咲いていた。その周りには二輪の水色のガーベラその3本の周りに集まるようにピンク色の桜草が多数咲いている。
「この白薔薇はマダムです。」
気高くおしゃれなリーズの姿を白薔薇へと例えていた。桜草はお店を訪れる淑女達だという。
「わたくしは洋装は分かりませんが母や春子さんなど社交界の女性達は皆マダムを慕っていると思います。マダムは淑女達の華です。」
「ありがとう。香子様。」
「マダム、わたくしもお店なくしてほしくないです。」
「そうよ、マダム絶対勝ってね!!」
月子も後押しする。
「そうです、マダム。」
香子はリーズの耳元で囁く。
「分かりましたわ。さっそく準備しましょう。」
「ちょっと待って!!その前に私のオーディションのドレス選んで。」
「はい、月子様。」
月子と香子が帰ると2階へ上がる。白い紙を取り出してデザイン画を描き始める。




