コンバット・ドゥ・ラ・モード
「まあ、高草木夫人から?」
「ええ、専属のデザイナーになってほしいと頼まれたそうなのよ。」
リーズの店には春子が訪れている。栄子とのことの経緯をサリーから聞く。
「あの方、おしゃれで流行には敏感な方なのよ。まさかマダムにそんな依頼するなんて。目の付け所はさすがね。」
栄子は貴婦人同士でのお茶会や鹿鳴館での舞踏会では最新のドレスを着てくる。貴婦人の中でも評判である。
「だけど春子様、高草木夫人は自分のデザイナーというより上の娘が留学するからイギリスに着いていってほしいそうなのですよ。」
「娘って香子さんのこと?」
「ええ。」
「香子さんが留学なんてどういう風の吹き回しかしら?」
「春子様、何かご存知なのですか?」
香子はあまり舞踏会などの西洋式の集まりには顔を出さない。一度お茶室でお茶を立てているのを見かけたくらいだ。他にもお花を習っていて海外に目を向けるような令嬢ではないという。その時
「ごめん下さい。」
来客を告げるベルと共に1人の夫人が入ってきた。
「あら、春子夫人。ごきげんよう。」
「高草木夫人。こんなところで会うなんて偶然ですわ。」
来客は栄子であった。傍らには振り袖姿の香子もいる。
「サリー、マダムはいるかしら?」
「今呼んでまいります。」
サリーはリーズを呼びに奥へと消える。
「今日は娘の香子も連れてきましたわ。どう素敵でしょ?マダムのお店は。」
「そうですね。お母様。」
香子は愛想なく答える。
「香子、貴女はもっと流行に目を向けるべきだわ。女の子だってこれからは洋服で街に出て、仕事だってするのよ。職業婦人よ。」
「高草木夫人、香子さんはどんな職業をご希望なのかしら?」
「ピアニストよ。そのためにはイギリスの音楽学校で一流の音楽家の先生から教わるのよ。そのためにピアノと英語も習わせてますの。」
「夫人、それは香子さんの意志ですか?」
奥からリーズが現れる。
「マダム、いえわたくしが決めたことですわ。香子にはもっと広い視野を持ってもらいたいの。」
「高草木夫人、勿論それは素晴らしいことですわ。ですが先日も申し上げた通り本人が希望してない限りわたくしが干渉することはできませんわ。」
「お客様の要望が聞けないのかしら?」
「大変申し訳ございませんが、香子さんが望まない限り。」
香子は無言を貫いている。
「香子、貴女がお願いしなさい。」
「お母様、わたくし今の振り袖がいいのです。」
香子が口を開く。
「振り袖の時代なんて終わりよ。これからは洋服の時代になるのよ。」
栄子も引き下がらない。
「そうね、でしたらこういうのはいかがかしら?」
リーズが提案する。
リーズと栄子でおしゃれ対決を行う。それぞれ違う令嬢をコーディネートする。
「貴女のセンスはわたくしも素晴らしいと思っているわ。貴女が勝ったらわたくしが香子さんとイギリスに行く、そして貴女が負けたらわたくしの要望を1つ受け入れる。
C'est un combat de la mode.
Qu'est-ce que vous pensez ? 」
「C'es bien, Madame.」
「交渉成立ですわね。」
「ですが、マダム、勝敗はいかがして決めるのかしら?」
「あの」
春子が声をあげる。




