偽令嬢への反撃
「西宮鮎子、出ろ。釈放だ。」
一体何があったのか?だけど無実が証明されたのだ。
(きっと春子さんが証明してくれたのだ。)
警察署を出ると入り口で白地にピンクの薔薇の入ったフリルのワンピースの少女が待っていた。
「鮎子様」
蘭子であった。
「良かったです。出てこれて。」
昨夜春子がドレス姿でポートリー邸にやってきた。同行したはずの鮎子がいないことに蘭子もミスター・ポートリーも不審に思った。
春子から事情を聞いたポートリー公爵は保釈金を払ってくれた。蘭子が迎えに来てくれたわけだ。
「ごめんね。蘭子。心配かけて。」
「鮎子様、行きましょう。」
「行くってどこへ?」
「鮎子様のご実家ですよ。さあ乗って下さい。馬車を待たせてありますわ。」
警察署の前には一台の馬車が止まっていた。それはポートリー家の馬車だった。
その頃西宮家では来客が2名あった。
「春子さん、わざわざ入らしてくれてありがとう。今日はどんなご用かしら?」
1人は春子だった。
「先日実家へ戻った時、このようなものが見つかりまして、是非鮎子さんに見せようと思って持ってきたのですわ。」
春子が持って来たのはアルバムだった。
「宜しければ今から鮎子さんに会ってお見せししても宜しいかしら?」
最初は夫人は渋ったがそこに鮎子になりすました椿が通りかかる。和装ではなく新品のドレスを着ている。
「お母様、構わないわ。」
「鮎子、大丈夫なの?昨日は」
「ええ一晩休んだらもうこの通りだわ。今マダムリーズのお店のお咲さんって方がいらしてるの。お茶を入れようと思って。春子さん、是非お部屋に入らして。」
もう1人の来客はお咲であった。
春子は誘われるまま部屋に上がる。
部屋にはすでにお咲が待っていた。
「鮎子さん、これ見て。」
春子はさっそくアルバムを見せる。それは春子が女学生時代に軽井沢の別荘で撮影した物だった。傍らには鮎子もいる。当時の鮎子にしては珍しく肩の出た白いワンピースを着ている。
「私も見ても宜しいでしょうか?」
お咲も2人の輪に加わる。
お咲はアルバムのページを1枚1枚めくっていく。
「和装だけでなくドレスもワンピースもなんでお似合いなのですね。椿さん。」
お咲が鋭い視線でいい放つ。
「あら、貴女こないだもその方と間違えていたようですがわたくしは西宮鮎子ですわ。」
「ではこれはどう説明してくださるのかしら?」
次の瞬間お咲は椿のドレスの右肩の部分を下げる。
そこには痛々しいほどの火傷の傷があった。
「貴女は私に幼い頃別荘が火事になったときの跡って言いました。でもこの写真の貴女の肩は一切傷跡もなくきれい。どういうことかしら?!」
ちょうどその時来客を知らせるチャイムがなった。春子はいいところに来たと言わんばかりにほくそ笑む。
「お嬢様、大変です。」
女中が部屋へとやってくる。
「帝都のありとあらゆる新聞社が訪ねてきてます。お嬢様に会わせろと。」
「分かったわ。今行くわ。」
椿が下の階へ降りると女中や夫人が記者達の対応をしていた。
記者達は椿に気づくと我先にとかけよる。
「お嬢様、お話宜しいですか?」
「ええ、何かしら?」
「貴女は本当に家出した西宮鮎子嬢なのですか?!」
次回最終回です。




