お城へ
玲香は屋根裏部屋の自室で荷造りをしていた。玲香がかずやとの結婚が決まり福島家のお屋敷を離れるのだ。
「お嬢様」
やってきたのはおりさだ。いつもの質素な着物とは違い丸襟の薄紫ワンピースに白いフリルのエプロンを着けている。おりさは玲香の専属メイドとして一緒に高島家に行くことになった。
「おりさ。着いてきてくれるのね。」
「はい。これからもずっと一緒です。お嬢様。」
「ええでもいいの?鮎子様のことは」
「はい、気持ちは伝えられました。」
舞踏会の夜おりさは鮎子に告白した。勿論結果は見事玉砕。でもおりさはそうなることは分かっていた。
「気持ちは嬉しい。だけどその言葉はいつか出会う王子様に取っておいてと。」
鮎子なりの優しい断り方だった。
きっと高島家に行けばまた素敵な出会いがあるだろう。
「玲香、おりさ!!」
そこに園が数名の女中達を連れてやってきた。
「こんなところで何やってるんだ?仕事が溜まってるだよ。」
「そうだ。早く下に降りて手伝いな。」
しかし玲香もおりさも動じない。その代わり玲香が答える。
「お断りします。わたくし達もう辞めるので。」
「何だって?!どうせ行くところなんてないだろう?」
「お嬢様は王子様と婚約したのです。だからもう女中なんてしなくていいのです。」
今度はおりさが返す。
しかし女中達は信じずお腹を抱えて笑い出す。どうせいつもの空想だと思い。
「大変だよ!!」
そのとき別の女中が階段をかけ上がってくる。
「高島公爵のご子息がいらっしゃってます。」
一同はざわつく。高島公爵家が社交界でその名を知らな者はいない公爵家だということを女中達は皆知っていた。
「玲香を呼んで来いと言ってるんだよ。あんたなんかしたのか?」
玲香はおりさと顔を見合せ微笑み合う。王子様が迎えに来てくれたのだ。
2人は荷物を持って女中に連れられ下の階へと向かった。園達も後をついてくる。
そこに待っていたのはかずやだった。隣に春子もいた。
「かずや様うちの玲香が何か失礼な子とでも?!」
女中が尋ねる。
「失礼なのは君達だろう?」
かずやが女中達に向かって声をあげる。
「玲香さんは僕の大事な婚約者だ。それに初めて出会ったときも僕に礼儀正しく接してくれた。彼女のことを悪く言わないでくれ。」
女中達は大人しく去って行った。
かずやが庇ってくれた。やっぱり玲香にとってかずやは王子様であった。
「玲香さんに渡したい物がある。」
かずやはジャケットから箱を取り出す。中を開けると指輪が入っていた。
「玲香さん、左手出して。」
玲香は左手を差し出とかずやは彼女の薬指に指輪をはめる。
次回最終回です。
リーズ達との長い旅路も終わり。少し寂しい気もします。




