お皿の破片
「きゃあ!!」
玲香の悲鳴を聞きおりさと鮎子は台所へと走る。台所には膝をついて倒れる玲香と割れたお皿があった。その周りをお園をはじめとする女中達が囲んでいる。
「お嬢様大丈夫ですか?」
おりさが駆け寄る。玲香は怪我がなかったようだ。
「ありがとう。わたくしは平気だわ。少しびっくりしただけ。」
そこに騒ぎを聞き付けて和風の男性がやって来る。
「一体何の騒ぎだ?」
春子の父であり福島家の領主である。
「ご主人様。」
玲香達女中は領主にお辞儀する。
領主は散らばった皿の破片を目の当たりにする。
「お前たちがやったのか?」
「いえ、玲香が。」
お園が領主に告げる。
「申し訳ございません。今片付けます。」
領主は呆れたようにその場を去っていた。
そう言って玲香が破片を広い始める。それを見て手伝おうとするとおりさと鮎子。その時。
「いたっ。」
破片が鮎子の手に刺さる。手から出血してしまう。
「鮎子様」
おりさは着物の帯からハンカチを取り出して傷口を塞ぐ。
「玲香は何考えてるのかしら?」
「自分が割った皿をお客様に片付けさせるなんて。」
どこからか影口が聞こえてくる。
「玲香もだけどおりさもよ。買い出しは遅いし、お皿は割るし。仕舞いにはお客様に怪我までさせるなんて。」
「この子達が来てから私達の仕事が増えてるじゃない。早くやめてほしいわ。」
「君達いい加減にしないか?!」
鮎子が声をあげる。
「皿を割った玲香ちゃんにも責任はある。だけど彼女は何も言わずに片付けてくれた。君達は彼女の先輩なら手を差し伸べるべきじゃないのか?この屋敷は使用人の教育もまともにできないのか。」
「鮎子様」
園が答える。
「若奥様のご友人である貴女に失礼かもしれませんが、わたくし共使用人には使用人のやり方がございます。玲香は没落した華族の娘で家事1つ知らないのです。どこに嫁いでもで恥をかかないようにあえてわたくし共は手を出さず玲香自身にやらせているのです。これがわたくし共の教育、花嫁修業でございます。」
(どこにも嫁いでないお前達がそれを言うか)
鮎子がそう言い返そうしたとき、おりさが鮎子より数秒速く立ち上がる。
「お嬢様は公爵家の王子様と婚約しています!!だから家事なんて必要ないんです!!お嬢様は横浜にいた頃は、お茶にお華、社交ダンスに外国語と公爵家に嫁ぐような花嫁修業を立派にしてました。」
「お嬢様って使用人のくせに生意気なのよ。」
女中の1人がおりさの頬を叩こうとする。おりさは目を瞑る。しかし
「その辺にしておけ。」
鮎子が女中の腕をつかむ。 女中達は一斉に去っていった。
その後おりさは鮎子を玄関先まで見送る。
「鮎子様、ありがとうございました。」
「こちらこそありがとう。」
鮎子はハンカチで手当てしてもらった手を見せる。
「おりさちゃんもよく玲香ちゃんを守った。立派だよ。」
鮎子はおりさの頭を撫でる。
「そうだこれ。」
鮎子は2通の封筒をおりさに手渡す。




