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マダムリーズの帝都レフィーユコレクション  作者: 白百合三咲
帝都の少公女
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幻のデビュタント~後編~

「お嬢様、大丈夫ですか?!」

おりさが声をかけても玲香は泣き続けている。

落ちつかせようと鮎子とサリーは椅子に座らせる。


「福島家の可愛い使いさん、お待たせしましたわ。」

リーズがマタニティードレスを持って戻ってきた。

「どうなさったの?お嬢さん?」

リーズは玲香の異変に気付き声をかける。

落ち着かせようと紅茶を勧める。

「さあお飲みなさい。」

玲香はゆっくりと出された紅茶を口にする。

「落ち着きましたか?お嬢様」

「ごめんなさい。お店の素敵なドレスやアクセサリーを見てたら思い出してしまったのです。」

玲香は口を開き語りはじめる。今までのことを。横浜のお屋敷に住んでいたこと、父の死後福島家におりさと共に奉公に来たこと、そして社交界デビュー当日のこと。


「貴女華族のお嬢さんでしたのね、」

ミセスポートリーが声をかける。

「はい、一ノ宮玲香と申します。」


『一ノ宮?!』

ミセスポートリーと鮎子はその名前に聞き覚えがあった。


「玲香さん、君のお父様は貿易商をしていんだよね?」

鮎子が尋ねる。

「はい。」

「やっぱりそうだわ。」


 ミセスポートリーはとある公爵家から舞踏会に誘われている。その公爵家の長男というのが、貿易商の一ノ宮家の令嬢と婚約しているという。


「わたくし、幼い頃お父様からよく言われてましたの。15才になったらお城の舞踏会に行くのだと。そこで素敵な王子様が待っている、玲香はその王子様と結婚するのだと。」


そこまで聞くとミセスポートリーは玲香にある提案をする。

「玲香さんでしたね、宜しければ公爵家の方に会ってみません?」

「宜しいのですか?」


それは舞踏会にポートリー夫妻に同行しないかという誘いだった。

さきほどまで涙でくしゃくしゃな玲香の顔に一寸の笑顔が戻る。




 その後詳しい事があれば鮎子がまた福島家を訪れるということになり、ミセスポートリー達とはそこで別れた。


 玲香とおりさが福島家に戻ったのは夕暮れに差し掛かかった頃だった。

「遅い!!一体どこで油を売ってたのよ?!」

お園は2人が帰ってくるなり2人を大声で怒鳴りつける。

「あの、お嬢様が気分悪くなってしまって。」

おりさが玲香を庇う。

「何がお嬢様よ?使用人のしたっぱのくせに!!ご主人様や奥様の夕食が遅れるだろう。買い出し一つでどんだけかかっているんだ?!」


2人はその夜罰として夕食抜きで後片付けも2人ですることになった。

2人は冷たい水で食器を洗う。


「玲香ちゃん、おりさちゃん。」

2人は名前を呼ばれ振り向く。そこには身重の春子がいた。今日2人が受け取りに行ったマタニティードレスを着ている。


「若奥様」

おりさはとっさに春子の元に駆け寄り、歩くのがやっとの春子の手を支える。

春子は喉が渇いて台所にやってきたのだ。

おりさは春子にお茶を入れる。

「今日は2人共ありがとう。このドレス。私の行き付けなの。」

行き付けとはマダムりーズの店のことだ。

「そうだわ。良かったらこれ。」

春子は台所にある袋からフランスパンを1本取り出す。

「内緒でたべてね。」

春子は使用人やご主人に奥様とは違う。玲香やおりさに対してきつく当たったりもせずいつも優しくしてくれる。

春子がお産で戻ってくる前は2人に手を差し伸べてくれる人なんていなかった。


春子が部屋に戻るとおりさはパンを食べようとする。

「おりさ、待って。」

玲香はおりさを止める。

「良かったら私の部屋で食べない?一緒に舞踏会の練習しましょう。デビュタントになれるのだから。」

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