マダムリーズのウォーキングレッスン
リーズがショーに出すドレスは完成に近づいていた。赤いフリルにオフショルダーのドレスだ。後はコサージュをつけるだけだ。まるで夜会に着ていくようなドレスだ。
「マダム、只今戻りました。」
「あらお帰りサリー、そちらの方は?」
リーズはマーシュに気づく。
「初めてまして。マーシュです。」
「マダム、マーシュさんも一緒にショーに出演するんですよ。」
「待ってサリーさん。私ショーは辞退しようと思ってるのに。」
「どうしてせっかくレッスンしてるのだから。」
二人の話にリーズが口を開く。
「マーシュさん、お話だけでも聞かせてくれるかしら?」
マーシュは今日レッスンであったことを話す。慣れないヒールで転倒してしまったこと、セレナに「まともにウォーキングもできない人」と馬鹿にされたこと。そして自分の背の低さをコンプレックスに思ってること。
「ねえ、マーシュさん貴女はマヌカンは自分でやりたいって手を挙げたの?」
リーズが尋ねる。
「いえ、デザイナーさんから着てほしい衣装があると。でもマヌカンに選ばれたのは嬉しかったです。」
「ではショーに出たい?」
「はい、出たいですけど、でも」
リーズはマーシュの頭上に本を置く。
「さあ、出たいなら始めましょう。」
「始めるって何を?」
「ウォーキングレッスンよ。上手くできないなら他の人より多く練習すればいいだけだわ。」
そう言ってリーズはマーシュの手を取りゆっくりと歩き出す。
「マーシュさん!!」
サリーが声を上げる。
「良かったわね。マダムは社交界で花形貴婦人だったのよ。だからきっと貴女も素敵なレディのように歩けるようになるわ。」
するとリーズはサリーの頭上にも本を乗せる。
「サリー、貴女もやるのよ。貴女だってショーにでるのでしょ。」
リーズのウォーキングレッスンは遅くまで続いた。
リーズの手拍子に合わせサリーとマーシュは歩く。
「マーシュ、下向かない!!」
「ウィ」
「サリー、背中真っ直ぐ!!」
「ウィ」
リーズの厳しい指摘が飛び交う。
2人のウォーキングが形になってきたのは日付も変わった頃だった。
「サリーもマーシュも随分上達したわ。今日はこのくらいにしましょう。」
「ノン、マダム。私もう少し練習していきたいです。」
「マーシュ、気持ちは素晴らしいけど、今日は寝なさい。休むのもレッスンよ。」
その夜はマーシュはリーズの部屋に泊まった。翌日のレッスンはサリーと共に向かった。
その日も昨日と同様先生の手拍子に合わせてマヌカン達が歩く。
「はい、次」
マーシュの番がやってきた。
セレナは冷めた目で見ている。どうせまた転倒するんじゃないと言わんばかりに。
しかしマーシュはまっすぐ歩いていく。周りに遅れることなく。
マーシュの列が終わると先生がマーシュの元へやってくる。
「貴女、昨日より上達したじゃない。その調子で頑張りなさい。」
「ウィ」
マーシュは満面の笑みで答えた。




