白い大地の少女
パリに亡命したトーニャの話です。
「お嬢様、小包が届いております。」
女中の声を聞き2階の自室にいたトーニャは下の階へと降りる。
「まあどなたから?」
「リリカ様からです。日本から送られてきました。」
リリカとはトーニャがロシアにいた頃の親友だ。
「リリカ、どうしているかしら?懐かしいわ。」
小包の中はピンクの丸襟のブラウスと黒のジャンパースカートだった。ジャンパースカートは裾のフリルが華やかだ。
「トーニャへ
無事にソビエトを脱出できて良かったわ。私は今日本のブティックで働いています。マダムはパリの社交界で名の知られた貴婦人です。
今日は私がデザインした洋服を送ります。良かったら着てみて下さい。
いつかまたお会いできる日を楽しみにしてますわ。ごきげんよう
リリカ」
トーニャは自室に戻りリリカが送ってくれた洋服を着てみる。
「あらトーニャちゃん?」
そこに兄の婚約者のエレネが通りかかる。
「可愛いお洋服ね。どうなさったの?」
「リリカさん、ロシアにいた頃の親友が送ってきて下さったの。」
「ねえ、せっかくだから貴女のお兄様や皆にも見せてあげましょう。」
そう言ってエレネはトーニャを1階のリビングへと連れていく。
リビングではエレネの父とトーニャの兄エドガーがいた。エレネの父は新聞を読んでおり、エドガーは友人に手紙を書いていた。
「お父様、エドガー、ご覧になって。」
2人の視線がトーニャへと移る。
「こちらリリカさんが日本から送ってきて下さったのよ。どうかしら?」
「トーニャ、似合ってるよ。」
「ありがとうお兄様。」
こうやってお兄様と笑い合えるのはいつぶりだろう。
ロシアがソ連になってからは散々だった。
皆と同じ黒い服を着せられ工場で朝から夜まで働かされ、家も革命軍に差し押さえられ、舞踏会やお茶会もなくなった。いつも舞踏会で着ていたドレスは目の前で革命軍の女に破られた。
「お兄様」
「何だ?」
「パリに来れて良かったですわね。」
「ああ」
「ねえトーニャちゃん」
エレネがトーニャにファッションブックを手渡す。
「ねえパリにあるオートクチュールのお店が世界で初めてファッションショーをやるの。一緒に見に行かない?」
トーニャは嬉しい誘いに「ウィ」と答えた。
次回から連載再開します。
次回はなんとパリが舞台です。




