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マダムリーズの帝都レフィーユコレクション  作者: 白百合三咲
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パリの乙女蘭子 ~後編~

 蘭子は翌日も芝居の稽古へと赴く。今日はジュローデルとロザリーが初めて舞踏会で対面するシーンだ。

「お嬢さん、僕と踊って頂けませんか?」

桜子は手を差し出す。

「ウィ」

蘭子は差し出された手を取る。しかし声に元気がない。

この後2人はダンスとなるが蘭子の動きがぎこちない。


「はいやめ。」


演出家が2人の芝居を止める。

「蘭子ちゃん、今日の君の芝居最悪だね。昨日まではあんなに良かったのに。」

「すみません。」

蘭子は演出家の厳しい言葉に泣きそうになる。

「君が出てるシーンは後回しだ。」

演出家の指示で蘭子が出ていないシーンを稽古することになった。

役者達は準備に取り掛かる。


「なんであんな娘ヒロインにしたのかしら?」

「あの娘どこの劇団にも映画会社にも入ってない素人よ。私のが上手いのにヒロインとか笑わせるわ。」


蘭子の悪口が稽古場内に飛び交う。

蘭子は居たたまれなくなり稽古場を飛び出してしまった。


公演で蘭子が1人泣いていると声をかけられる

「蘭子ちゃん」

蘭子は顔を上げる。そこにいたのは桜子だった。

「蘭子ちゃんどうしたの?昨日まであんなに上手だったのに。蘭子ちゃんは素人だけど私は蘭子ちゃんのお芝居好きよ。だからもっと自分に自信を持ちなさい。」

「違うんです。桜子さん、私」


蘭子は自分の心情を桜子に話す。

こないだの稽古で演出家の先生に褒められたのは嬉しかった。だけど桜子さんに恋してるみたいと言われた時は鮎子を裏切っているのではないかと感じたのだ。

「蘭子ちゃん、それは裏切りでも浮気でもないわ。貴女は蘭子ではなくロザリーとして私を見ていたのだから。それに有名な歌手や女優だって舞台でどんなラブロマンスを演じようと舞台を降りれば他に恋人がいるわ。あのオペラ歌手三浦環でもね。」


蘭子は少し安堵した。自分がしてることは間違ったことではないと。


「蘭子。」

蘭子は再び声をかけられる。声をかけてきたのは鮎子だった。

「こんなところでどうしたんだ?稽古中じゃないか?」

「実は」

今さっき桜子に話したことを鮎子にも打ち明ける。

「蘭子、君が舞台を降りたいならそれでいい。でも僕は舞台の上の君の姿も見てみたい。僕のことはまた舞台が終わったら考えてほしい。どうだ?」


蘭子は自分の選択を決断する。


「桜子さん、私やっぱりこのお芝居出たいです。いいですか?」

「ええ、勿論よ。」



あれから1ヶ月後舞台の幕は開く。帝劇と比べれば小さい劇場だが満席だ。


蘭子は開演5分前になると舞台上にスタンバイする。

本ベルがなり幕が開くとそこはフランスの宮殿。舞踏会の真っ最中。蘭子演じるロザリーはわっかのドレスでまだ舞台の隅にいる。そこに現れたのが桜子演じる主役のジュローデルだ。

ジュローデルはロザリーを見つけると真っ先に声をかける。

「お嬢さん、僕と踊って頂けませんか?」

「わたくしでございますか?」

台詞も一言一言丁寧に発している。

「ああ、ワルツのお相手をお願いできますか?」

「ウィ」

蘭子は手を取り舞台の中央で踊り出す。視線は桜子1点を見つめている。



舞台は観客の拍手が鳴り止まない中幕をおろした。


「蘭子ちゃん」

舞台袖にはけると桜子が声をかけてくる。

「素敵だったわ。よく頑張ったわね。」

桜子は蘭子を抱き締め髪を撫でる。


「ちょっといいか?」

そこにあらわれたのは鮎子だ。

「芝居は終わったから彼女は僕の妻だ。」

「あら、ごめんなさい。」

桜子が手を放す。


「蘭子、おいで。」

今度は鮎子が蘭子を抱き締める。

「舞台素敵だったよ。だがこれからは僕を見てほしい。でももしまた舞台に立ちたければ立てばいい。僕は君が笑っている姿を見ていたいんだ。」

「はい。」


蘭子は思った。鮎子以上に自分を認めてくれる夫は世界中探してもいないだろうと。 


(鮎子様、私は貴女に一生着いていきます。)

春子が観劇した裏にはこんなエピソードがあったんですね。

蘭子ちゃんは女優志望ということで職業婦人志向ではありますがここは少女歌劇の娘役みたいに恋人にも揺れる姿も書いてみました。

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