リリカのデザイナー修行~前編~
花の家は喫茶店をやっている。花も学校が終わると手伝っていて普段は着物に白いエプロンという姿で店頭に立っている。最近では新しい子が入り洋装がしたいというのはその新入りの子が言い出したのだ。そこで以前からリーズのファンだった花がお願いに来たのだ。
「花様、お話は分かりましたわ。しかし先約が入っておりまして、ご依頼はいつお受けできるか分かりませんの。」
リーズの返答に花は悲しそうだ。
「あの、マダム?」
そこにお茶を持ってきたリリカが声をあげる。
「あの、花様のお店の洋装のデザイン、私に描かせて頂けませんでしょうか?」
「リリカ、貴女がいつも仕上げてくれるディスプレイのコーディネートは素晴らしいわ。だけどデザイン画というのは簡単に描けるものではないわ。」
「私ロシアにいた頃よく絵は描いておりました。マダムの作る衣装を見て私も一から作りたいと思ったのです。私にやらせて下さい。お願いします。」
「分かったわ。やって見なさい。」
お店が終わると外でリリカを待つ者が1人。
「リリカさん。」
「花さん。」
今日店を訪れた花だった。
「花さん、どうなすったの?」
「新しい洋装のデザイン、私も一緒に案を出したいのですがいいですか?」
「ええ、勿論よ。」
花はリリカの迎えの馬車に乗り込む。馬車はほどなくして一軒のお屋敷へと到着した。
リリカと花は御者に手を取られ馬車を降りる。お屋敷に入ると執事やメイド達が迎えてくれた。
「さあ、お入りなさい。」
花はリリカに案内されリリカの部屋へと通される。
リリカの部屋は広くてベッドにウォークインクローゼット、テーブル、リリカの机にはスケッチブックがあった。
「リリカさん、こちらは」
「私が描いたのよ。ご覧になって。」
スケッチブックには田園の風景やお屋敷が描かれていた。そこにはエプロン姿や白いワンピースの少女も描かれていた。
「ここはどこですか?」
「以前私が住んでた場所よ。私はお父様とお母様とロシアに住んでいたの。だけど革命が起きてこの日本に亡命してきたわ。」
絵に描かれた少女はロシアに住んでいた頃にいたメイドや友達だという。
花はリリカの絵や部屋中を見渡すとなぜか親近感を感じた。
「リリカさん私のお姉様のようだわ。」
「お姉様?」
お姉様と言っても血の繋がった実は姉ではない。花の女学校の2つ上の方でエスという関係で特別親しくしていたのだ。花のお姉様は華族の令嬢で洋装のドレスをたくさん持っていた。絵を描くのが好きで花が遊びに行く度ドレスを着せてくれスケッチしてくれたのだ。そんなお姉様も今年の春女学校を卒業しパリの美術学校に留学してしまったのだ。
「では私が花ちゃんのお姉様の代わりになりますわ。さあ着替えて。」
リリカは花のドレス姿をスケッチした。何着か違うドレス、違うポーズで描くのだ。そこから新しいアイデアが生まれてくるのだ。
その夜リリカはスケッチした花の絵を元にデザイン画を完成させた。




