小さなお客様 ~後編~
お店が終わるとリーズはエミリィの新しいドレス作りにとりかかった。エミリィは赤いドレスを着ていた。同じ色を探すが見つからない。
リーズは残りが比較的多い淡いブルーの布でドレスを作り出す。
採寸し型紙に合わせて布を切り取る。そして仮縫い。普段はミシンを使うが人形の洋服はサイズも大きくないので裁縫は手縫いで行う。
ふと棚に目をやるとフローラが座っている。リーズの幼い頃からのお友達だ。
以前フローラも飼っている猫にドレスをちぎられたことがあった。
(その時も新しいドレスを仕立てたんだったわ。)
フローラはリーズの最初のお客様だったのかもしれない。
「さあ完成ね。」
エミリィは淡いブルーの3段フリルのドレスに着替えた。中にはパニエを入れている。リーズはエミリィをフローラの隣に置く。
「二人とも仲良くね。」
そう言ってリーズは寝室へと向かう。
その夜リーズは夢を見た。
そこはかつて自分が暮らしたパリのお屋敷にいた。
「リーズ、リーズ。」
誰かが自分の名前を呼ぶ。
「誰?」
そこにいたのはフローラだった。リーズと同じ等身大の大きさになっている。
「フローラ?!貴女人間になったの?」
「違うわよ。お星様にお願いしてリーズと同じ大きさにしてもらったのよ。」
「リーズも自分の姿見てごらんなさい。」
ふと姿見に目をやる。そこに写っていたのは現在の自分ではなく、17才のときの自分だった。
「わたくし、若返ってるの?」
「ええ、お星様にお願いしてもらったの。だって今日はお茶会じゃない。」
リーズは17才の頃を思い出す。リーズはフローラやお人形達とお茶会や舞踏会をしていたのだ。
「さあリーズ、行きましょう。」
「行くってどちらへ?」
「中庭よ。今日のお茶会には新しい子がいるわ。」
リーズはフローラに連れられて中庭へ行く。テーブルにはケーキや紅茶が用意されていた。そしてすでに先客が1人いた。彼女はブルーの3段フリルのドレスを着ている。
「リーズ、私の友達。エミリィよ。」
「ごきげんよう、マダムリーズ。」
エミリィは立ち上がり、ドレスを摘まんでリーズに挨拶する。
「ごきげんようエミリィ。」
3人はテーブルに座りおしゃべりしながらケーキを楽しんだ。
リーズが目を覚ましたときはもう朝だった。リビングに向かうと棚の上にはフローラとエミリィが微笑んでいた。
「良かったわね。フローラ、お友達ができて。」
リーズは2人を紙袋へ入れる。
その日の午前中リーズは馬車で高草木家のお屋敷へと向かった。
「お客様からお預かりしたお品物お届けに参りました。」
リーズはメイドにつげると応接室に通される。
ほどなくしてメイドは栄子夫人を連れてやってくる。
「マダム、ようこそお越しで。本日はわたくし何か注文されたでしょうか?」
「いえ、昨日お嬢様に頼まれたお品物をお持ちしたのですが。」
そこに律子が入ってくる。
「お姉さん!!」
「お嬢様、エミリィ様をお連れしましたよ。」
リーズは紙袋からエミリィを取り出す。
「お嬢様、大変申し訳ありません、エミリィ様のドレスと同じ色の布がなかったので新しい物に新調させて頂きました。どうぞご了承下さい。」
「私こっちのがいい。だってこのドレス、サンドリオンと同じだもの。」
サンドリオンとは律子が英語の先生から教えてもらった物語の少女で魔法の力でドレスに着替え舞踏会に行くのだ。
「お姉さん、これお代。」
律子が渡したのは玩具のお金だった。
「律子!!失礼でしょ」
夫人が律子を嗜める。
「ありがとう。でも受け取れないわ。その代わり」
今度はリーズがフローラを紙袋から出す。
「この子もパーティーに入れてもらえますか?フローラって言うの。エミリィ様と遊びたがっているの。それがお代よ。」
「はい、フローラ、エミリィ行きましょう。」
嬉しそうにフローラとエミリィを連れて部屋に戻る律子をリーズは見送った。
次回からまた連載再開します。
今度の主役はロシアから来たあの娘です。新キャラも登場します。




