小さなお客様 ~前編~
春子とかなめの挙式から1ヵ月が経過した。
リーズは日本へと戻ってきた。長期間お店を任せていたサリーとリリカには休暇を与えリーズが1人でお店を開けていた。特にこれと言ったオーダーはなくお店を訪れる貴婦人や女学生達を接客しながら世間話をするというゆったりとした日々を過ごしていた。
「ごめん下さい。」
その日入らしたのは日本の公爵夫人高草木栄子様であった。桃地に白い花の着物を品よく着ている。
「いらっしゃいませ。栄子様。本日は何をお探しでしょうか?」
「今日はワンピースを。宮家のお茶会に招待されてますの。」
「まあ宮様の?」
「ええ、西洋諸国からのお客様もいらっしゃるので洋装で行こうと思いますわ。」
栄子夫人は丸襟のついたワンピースを選ぶとリーズの案内で試着室へと向かう。
その傍ら椅子に座って夫人を待つ少女が1人栄子夫人の娘律子である。律子は今年で5才になる。
「ごきげんよう、お嬢さん。」
リーズは律子に近づき挨拶する。
「ごきげんよう。」
律子は挨拶はしたがどこか浮かない顔をしていた。
リーズはふと律子が抱えた人形に気付く。
「可愛いお人形ね。」
「うん、私のお友達。エミリィって言うの。」
エミリィは律子が4才の誕生日に買ってもらったフランス人形だ。どこへ行くにもエミリィと一緒だ。
「でもね、エミリィはパーティーに出られないの。」
「パーティー?」
律子は大人達がお茶会や舞踏会をやってる傍ら部屋でお人形達とパーティーを開いているという。
「どうして出れないのですか?」
「だってこんな姿じゃエミリィが王妃様に笑われちゃうもの。」
よく見るとエミリィのドレスは裾が破れている。
「お嬢さん、宜しければエミリィ様のために新しいドレスをお作りしますわ。さすればパーティーに出席できますよ。」
「お姉さんそんなことできるんですか?」
「勿論ですわ。ここはブティックですもの。人間も人形も大切なお客様ですわ。」
ほどなくして栄子夫人が試着室から現れた。ワンピースの購入を決め会計をお願いする。
会計を終えると娘に声をかける。
「律子、帰るわよ。」
「私帰らない。だってお姉さんにエミリィのドレス新しくしてもらうんだもの。」
律子はエミリィのドレスが出来上がるまでお店で待っているつもりだ。
「律子、我が儘を言ってはいけません。馬車を待たせてあるのよ。それにお姉さんだって忙しいのだから。」
「嫌だ!!それではエミリィがパーティーに行けないわ。」
律子は断固として聞かない。栄子夫人も困り果てていた。
「あの、」
リーズが入る。
「お嬢さん、お人形達のパーティーは何時ですか?」
「明日のお昼の12:00よ。」
リーズは明日の12:00までにドレスを仕上げて高草木家のお屋敷までエミリィを送ると約束した。
1話完結の予定でしたが長くなりそうなので前編と後編に別けてお届けします。




