パリに咲いた恋~前編~
しばらくリーズの話になります。
「わたくしも同じですから。」
リーズの意味深の言葉が春子の頭に繰り返される。
「あの、それは一体。」
「わたくしが公爵様と結婚が決まったときもかも上手く進んだわけではなかったの。」
「もし宜しければ話して頂けますか?」
春子のお願いにリーズは過去の話を持ち出す。
時は遡り1900年フランス。リーズは17才の少女であった。リーズは幼い頃から人形集めが大好きで女の子の人形を両親から買ってもらう度自分の着なくなったドレスでお人形達にお洋服を作ってあげるそんな少女であった。
17才にもなるとリーズは年相応にお人形以外にも興味を向けるようになる。時代はベルエポックと呼ばれパリでは舞台芸術が花開いて多くの劇場が立ち並んでいた。若い乙女達は甘い恋の夢を求めパリのオペラ座へと足を運ぶ。当然リーズも例外ではなかった。
「さあ座りましょう。フローラ」
フローラとはリーズが所持するフランス人形であり、リーズの一番のお友達である。
リーズはフローラを胸に抱き共にオペラを楽しむ。
バルコニー席からの眺めは素晴らしい物であった。
リーズはフローラに小声で囁く
「フローラ、貴女と見れて良かったわ。素敵でしょ。」
夢のような時間は終わり侍女に連れられロビーを歩いていときだった。
「お嬢さん」
誰かに呼びとめられる。振り向くとそこにはブラウンのロングヘアの青年貴族が立っていた。顔立ちは端正でリーズは頬を染めて青年を見つめている。
「こちら貴女の物ではありませんか?」
渡されたのは紫の花のブローチであった。
フローラにふと目をやるとガウンのブローチが取れている。
「ありがとう。これはこの娘のだわ。これがないと悲しんでしまうの。」
「良かったです。お友達が悲しまなくて。では僕はこれで。」
青年は劇場のロビーを後にした。
「ねえナタリィ、」
ナタリィとはリーズ付きの侍女である。年も近くて何でも話せるいいお友達のような存在だ。
「はい、お嬢様。」
「今の青年はどちらの方かしら?」
「彼はパリ社交界の名士ルバンヌ公爵のご子息。確か名前はカルム・ド・ルバンヌ様と。」
「素敵な方ですわね。見目麗しいだけでなくフローラにも親切にしてくださるなんて。またお会いできるかしら?」
「ええ、社交界きっての公爵家の方ですもの。きっと舞踏会でお目にかかれますわ。」
その数日後リーズはルバンヌ家の舞踏会に招待された。
ナタリィを伴って参加する。名士とだけあって他の家より格段に華やかである。シャンデリアにオーケストラ。招待客も王室の親戚も来ている。
あまりにもきらびやかな世界にリーズは目を丸くした。
「お嬢さんまたお会いしましたね。」
そこに話かけてきたのはカルムだった。
「お越し頂きありがとうございます。」
「こちらこそご招待頂き光栄ですわ。」
「お嬢さん今日も素敵なドレスですね。」
今日のリーズは金髪を縦ロールにまきピンクのドレスを着ている。胸元に大きなリボンをつけスカートは4段のフリルだ。
「ありがとうございます。今日のために仕立てましたの。」
そのときオーケストラの音楽が始まり人々はフロアに出て踊り出す。
「お嬢さん、僕と踊って頂けますか?」
「ええ、喜んで。」
リーズはカルムに手を取られフロアに出て踊り出す。
だかリーズはなかなかステップが上手く踏めない。
「お嬢さん、肩の力を脱いで。」
「はい。」
「そう、その調子。僕を見て。何も考えないでただ僕に合わせて。」
先ほどよりはその場の雰囲気には慣れてきて、リーズも笑顔になった。
「そう。君は笑ってた方が素敵だよ。」
緊張はほぐれその場の雰囲気を楽しむ余裕は出てきた。だけどリーズは素敵な王子様を目の前にして胸の鼓動を押さえることはできなかった。




