2つの約束
桜子の話は最終回です。
オーディションから1夜開けた翌日、リーズの店に1本の電話があった。桜子からであった。
「まあ、良かったわ。おめでとう。公演また観に行くわね。」
桜子は見事ヒロインオーディションに合格したそうだ。
「思った通りだわ。」
「そうね。私が審査員でも桜子さんを選ぶわ。」
リーズの傍では春子とサリーがいる。
ベルの音が来客が来たのを告げる。珍しく男性である。春子が男性に見覚えがあることに気づく。
「貴方は昨日オーディションで審査員をしていた方ですよね!!」
その男性は帝劇の専属衣装デザイナーの大島であった。実は桜子をヒロインに推したのも彼である。桜子の衣装の着こなしが極め手となったのだ。リーズのお店から買ったことを桜子から聞いてやって来たのだ。
「まあ、嬉しいわ。ですがこの店に男性用の物は置いてないのです。」
「いえ、僕はお客として来たのではありません。マダム、貴女に折り入って相談があってきました。」
大島はリーズに勧められ席につく。
「それでわたくしにご相談とは何かしら?」
「実は貴女に帝劇の専属衣装デザイナーになって頂きたいのです。桜子のドレスはまさにロザリーのイメージにぴったりでした。貴女の作ったドレスが桜子の芝居を高めたと私は思います。貴女には是非これからヒロインの衣装を作って頂きたいのです。」
近くで聞いていたサリーと春子は耳を疑った。
帝劇?デザイナー?女優達がリーズの服を着て舞台に現れるのだ。そんな夢のような話があるのか。
しかしリーズの答えは2人の予想に反したものであった。
「申し訳ありませんが、その話はお受けできません。」
サリーと春子は疑問に思った。
「どうしてですかマダム?!帝劇の衣装デザイナーだなんて話題になるじゃないですか」
「そうですよ。お店に来るお客様だって帝劇のヒロインと同じ洋服だって知ればきっと喜びますよ。」
リーズが口を開く。
「ありがとうサリー、春子様。勿論貴女達の言うように話題性や顧客満足には繋がるのは事実よ。だけどわたくしは鮎子様や桜子様のように何かになりたい、成し遂げたい、そんな願望を持った乙女達の力になりたいの。だから今はその依頼をお受けすることはできないわ。」
「分かりました。」
大島はそれだけ言うと帰り支度を始める。
「大島様」
リーズが再び声をかける。
「帝劇の衣装もとても素晴らしく参考になる物だと思いますわ。それからもし桜子様のように自分の力で役を手にしたいという女優が現れたらその時は協力することをお約束致しますわ。」
「はい、ありがとうございます。その時は宜しくお願い致します。あっそうだ」
大島は帰り際に何か思いだしたようだ。
「ここだけの話ですが、月子、嫌がらせや裏で手を回していたのがバレて劇団から契約打ち切られたんですよ。」
「まあ、それもそうね。鮎子さんも言ってたわ。月子さんの芝居は上手いけど衣装が奇抜過ぎるって。きっとどのみち先も長くなかったわ。」
「まあ、春子様ったら、あらところで今日はその鮎子様は一緒じゃなかったの?」
サリーが尋ねる。
「今頃は横浜の港ね。蘭子ちゃんや新しい家族と一緒に。」
その頃春子の予想通り鮎子は蘭子、裕太、そしてゆきと一緒に横浜の港にいた。これから皆でイギリスで暮らすのだ。
「蘭子ちゃん!!」
そこに1人の女性が現れる。桜子であった。
「桜子さんどうしたんですか?」
「蘭子ちゃん達がイギリスに帰るって聞いたからお見送り。そしてこれお礼。船の中で皆で食べてね。」
桜子はお菓子の箱を手渡す。
「ありがとうございます。桜子さんも主演おめでとうございます。オーディションのときは本当に宮殿にいるかのように見えました。」
「ありがとう。これ蘭子ちゃんにあげる。」
桜子が手渡したのはお芝居の台本であった。
「蘭子ちゃんと一緒に台本読みしたとき楽しかった。それ読んで練習して、いつか一緒に舞台に立ちましょう。約束よ。」
「はい」
そのときイギリス行きの便の乗船時刻を告げるアナウンスが流れた。
「蘭子行くよ!!」
「はい!!」
蘭子は桜子にお辞儀をすると鮎子の元にかけていった。
思ったより長くなりました。
次回から新話始まります。リーズが海外進出するかもしれません!!




