ロザリーとマリーアントワネットの出会い
暦は変わり4月になった頃、リーズは帝国ホテルを訪れていた。ロシアから来た貴婦人にドレスを頼まれていたのだ。商談を済まし貴婦人の部屋後にする。
ホテルのロビーでお茶を飲んでいると見慣れた人物に声をかけられる。
「マダム」
そこには紺のスーツに青いスカーフを巻いた青年、いえ男装の少女が立っていた。隣には長い黒髪に白いレースのワンピース姿の令嬢がいた。鮎子と蘭子である。2人は今はイギリスで暮らしているが日本にいる蘭子の弟と妹に会いに帰国したのだ。
「お久しぶりです。マダム」
「お久しぶりね、鮎子様に蘭子様。」
リーズは立ち上がり膝を曲げてお辞儀する。着ているドレスがお辞儀するとともにふわっと膨らむ。
「きゃっ!!」
その時蘭子が1人の女性とぶつかりその場に転倒してしまう。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます。」
蘭子が立ち上がろうとしたとき女性の落とした本が目に入る。それは芝居の台本だった。表紙には「パリの乙女ロザリー」とタイトルが表記されている。
「あの、落としましたよ。」
蘭子は女性に台本を手渡す。
「貴女桜子様?」
リーズが女性に気づく。
「マダム、こんなところで会えるなんて光栄ですわ。」
「今日はどうなさったの?」
「今日ホテルのレストランで少女雑誌の撮影があったの。」
リーズと桜子の話を聞いて胸をときめかせる人物が1人。蘭子であった。
「あの、こちら台本、もしかして女優さんですか?」
「ええ、今度の舞台なの。」
「舞台?!」
「あの、蘭子といいます。私女優になりたくて、脚本見せて頂いてもいいですか?」
「どうぞ。」
桜子の台本に目を食い入るように読む蘭子。そこには
蘭子の好きな西洋の物語があった。
「ねえ、良かったら今から一緒に練習付き合ってもらえないかしら?今度オーディションなの。」
「宜しいのですか?」
「ええ、中庭で待ってるわ。」
「マダム、宜しければその間僕の部屋でお茶でもどうですか?」
今度は鮎子が傍にいたリーズを誘う。
「鮎子様ありがとう、でもわたくしは公爵夫人のドレスを仕上げなくちゃいけないわ。ここで失礼するわ。」
リーズはドレスを翻しお店へと戻っていった。
桜子が中庭で台本に目を通しているとほどなくして桃色のドレス姿で現れた。
「蘭子ちゃんどうなさったの?その格好」
「こちら鮎子様からもらったんです。西洋の物語って聞いて着てきたんです。」
「まあ、貴女面白い子ね。」
桜子は蘭子にマリーアントワネットの役をお願いした。フランスの王妃の役だ。
「じゃあこの場面からお願いするわ。」
桜子が蘭子に台本を見せる。
「ここが王妃様の舞踏会?こんな素敵な世界があるなんて」
桜子が演じるロザリーの台詞から始まる。台詞を発した桜子は落ち着いた優雅な女優ではなく華やかな舞台に胸踊らせる純情な乙女であった。
(凄い。これが桜子さんのお芝居?私もしっかりしなくちゃ)
「ごきげんよう。公爵夫人。まあ今日は可愛らしお客様も一緒なのね。」
立ち上がり膝を曲げてお辞儀をする蘭子。
「わたくし、ロザリー ラ モリエールと申します。お招き頂き光栄ですわ。」
桜子もまたお辞儀をする。赤いワンピース姿なのにまるでわっかのドレスを着ているように。
「ロザリーさん、どうぞ楽しんでいかれて。」
「あら、桜子ちゃん?」
桜子と蘭子の稽古に割って入る者が1人。月子であった。
「こんなところで何してるの?」




