プロローグ
今回から新しい話が始まります。4話にスカートとペティコートを買いに来た女優桜子がヒロインです。
大正6年3月下旬、鮎子と蘭子がイギリスに旅立ってから半年が経とうとしていた。リーズのお店も相変わらず上流階級の令嬢や貴婦人達で賑わっている。この時期女学校は卒業式が行われ、街では袴姿に卒業証書を持った女学生達の姿が多数見られる。
その日も1人卒業式帰りの女学生が訪れる。このお店の常連春子である。
「あら、春子さん。」
春子を出迎えたのはサリーである。
「ごきげんよう、サリー、マダムはいるかしら?」
「お待ち下さい。」
サリーが奥に行くのと入れ替わり来客が来る。春子はその来客の姿に硬直する。
「あの、、」
春子は来客に緊張を抑えて声をかける。
「峰山桜子さん、、ですよね?」
「ええそうよ。貴女は?」
「私福島春子と申します。」
「福島ってもしかして帝劇の後援をして下さってる?」
「はい、先日のカルメンも父からチケットを頂いて観劇したのです。赤いドレスでのフラメンコ艶やかで素敵でした。」
春子は桜子に手を伸ばす。桜子は手を取り握手をかわす。そこにちょうどサリーがリーズを連れて戻ってきた。
「春子様、桜子様。」
リーズが2人に声をかける。
「今日はどうなさったの?」
「実はこちらを。先日カルメンに観に来て下さったお礼。」
桜子はリーズに白い箱を手渡す。中をあけるとホールケーキだった。
「せっかくだからお茶に致しましょう。良かったら春子様も」
「マダム、宜しいのですか?」
「ええ。」
4人はテーブルを囲みお茶会を始める。
「春子様は今日は卒業式だったのかしら?」
リーズは春子の卒業証書に目をやる。
「ええ。」
春子は卒業後は実家でお茶やお華などの花嫁修業をする予定だ。舞踏会で出会った公爵家の長男と婚約し、今年の6月に挙式する予定である。
「それでマダム、ウェディングドレスを是非マダムにお願いしたいの。いいかしら?」
「勿論ですわ。春子様がお望みのドレスご用意するわ。」
4人は和やかな雰囲気でお茶やケーキを楽しんでいる。ほどなくして桜子が立ち上がる。
「あら、もうこんな時間だわ。これからお稽古集合日なの。」
お稽古集合とは稽古初日のことでそこで次に行われる演目が発表される。
「次はどんなお芝居なんですか?」
サリーが尋ねる。
「これから発表だけどフランスが舞台って聞いたわ。」
桜子はリーズやサリー、春子にさよならを言うと稽古場へと向かった。




