魔法のブティック
「マダム、こんな素敵なドレスはじめてだわ。」
春子は舞踏会に着ていくドレスを試着している。ピンクの生地に金の薔薇の刺繍がほどこされている。刺繍には光沢が使用されているのかきらびやかな光を放っている。
「とてもお似合いです。春子様」
「ええ、春子様オーロラ姫みたいですわ。」
サリーは童話を一冊持ってくる。オーロラ姫とは「眠れる森の美女」ヒロインのことだ。オーロラ姫は魔女に呪いをかけられても王子様をひたすら待ち続ける健気なプリンセスだ。
「ありがとう、マダム、サリー。」
「春子様にも王子様が現れるといいわね。」
リーズは微笑む。
「あっそうだわ。」
春子は何か思い出したように切り出す。
「昨日イギリスから届いたわ。鮎子さんからお手紙が。」
春子が封を切る。
「春子さんへ
お久しぶりです。お元気ですか?僕も蘭子も元気です。今僕達はミセス・ポートリーのお屋敷でお世話になってます。僕はお屋敷で執事兼夫人の息子の家庭教師として働いています。蘭子もメイドとして働いています。夫人の娘達の髪をいつも可愛く結ってます。娘達も喜んでます。夫人のはからいで二人だけではありますが挙式することができました。蘭子もウェディングドレスが着れて喜んでました。マダムにも宜しく伝えて下さい。 鮎子。」
手紙には写真が同封されていた。白タキシード姿の鮎子とウェディングドレス姿の蘭子が映っている。蘭子は頭に蘭の花のティアラをつけている。
「鮎子さんも蘭子さんも本当に変わりましたね。春子様」
「ええ、サリー。鮎子さん女学校ではいつも少女雑誌の少女達を羨ましそうに見てましたもの。やっと憧れてた自分になれて嬉しいのでしょう。これもマダムのおかげだわ。マダムの洋服はまるで童話のサンドリオンの魔法にかけられてるようだもの。」
「そんなことないわ。わたくしは彼女の手助けをしただけだから。自分の望む未来を手にしたのは鮎子様自身だわ。」
リーズは微笑んでそう答えた。
鮎子と蘭子の話はこれで終わりです。次回から新たなお客様が登場します。




