赤い靴の淑女
ここは日比谷にあるブティック。
「いらっしゃいませ。」
女主人のマダムリーズは今日もお客様をお迎えする。
「ごきげんよう。マダム。」
「ごきげんよう、月子様。」
「マダムのお店があって良かったわ。栄子夫人の専属デザイナーになるって聞いたときはヒヤヒヤしましたもの。オーディションはマダムの服がいいわ。」
訪れたのは月子だ。以前は花の両親の経営する喫茶店で働いていたが今は舞台や映画で主演を取れるようになり女優一本でやっている。
「これ、今度の舞台のチケットですわ。」
月子は次の舞台で主演に抜擢された。
「私、稽古があるから行かなくては。」
月子の店を出ようとすると同時に袴姿の女学生が入ってくる。
「ねえ、今の羽衣月子じゃないかしら?」
「綺麗。こないだの活動写真のバレリーナ素敵だったわ。赤い靴を履いて踊ってる姿。」
「赤い靴といえば野口雨情先生の童謡聞きました?」
「わたくしは少女の友に掲載されているのを見ましたわ。」
女学生達は流行の話題に花を咲かせている。
「すみません。」
そこにスーツ姿の美青年がやってきた。
「申し訳ございませんムッシュ。男性用のものは置いてなてないのです。」
「マダム、こんな格好ですが私は女です。」
青年は旅券を見せる。
「メアリー・ヒュエット。またの名を岩崎きみと言います。今日の午後からバイオリンのコンテストがありどうしてもドレスがほしいのです。」
メアリーは今朝起きるとホテルの部屋にかけられてたタキシードがなくなっていた。今日のコンテストで着る予定だったのだ。
(もしかして十和子さんが間違って持ってったのか?)
そう思って十和子の部屋を尋ねてみた。部屋のインターフォンを鳴らそうとしたとき部屋から夫人と十和子が出てきた。
「十和子さん?!」
十和子はメアリーのタキシードを着ていた。
「十和子、少女歌劇の男役みたいだわ。少女達は男役に夢中だから男装のが受けがいいわ。」
夫人はメアリーは不敵な笑みを浮かべる。メアリーのタキシードを持っていったのは紅城夫人だった。
「あの、そのタキシード私のです。」
メアリーは夫人に食らいつく。
「あら証拠でもあるの?言いがかりは辞めてくださる?行くわよ。十和子。」
十和子はうつ向いて母親に連れられて行く。
「酷い事する方もいらっしゃるのね。」
リーズはメアリーから話を聞く。
「さあ、ドレスを選びましょう。」
その時
「ねえ、赤い靴よ。」
リーズの店に来ていた女学生達が店内に飾られている赤い靴に目をやる。
「赤い靴の女の子はこの靴を履いてアメリカに行ったのかしら?」
「あら、赤い靴の女の子は子供よ。これでは大きすぎるわ。」
女学生達の会話にメアリーは耳を傾ける。
「マダム、あの赤い靴をくれないか?」
「分かりました。でしたらドレスはこちらにしましょう。」
リーズにドレスを渡されると試着室に入る。
「いかがですか?」
リーズが試着室の扉を開けると赤い薔薇のコサージュの付いたドレスに赤いハイヒールのメアリーが現れる。
「ねえ、あの方。」
女学生の1人がメアリーに気付く。
「あの赤い靴を買った方。」
「赤い靴の女の子かしら?」
「いえ、赤い靴の淑女だわ。」
メアリーはデリシャスパーティープリキュアのあまねちゃんを意識して書いてます。




