プロローグ
新章スタートです。
リーズが白菊女学院の制服をデザインしてから2年が経った大正11年。
「ごきげんよう、マダム」
リーズのお店には今日も貴婦人や女学生で賑わっている。白菊のように洋装の制服を取り入れる女学校も見受けられるが、まだまだ袴姿の女学生逹のが多い。
「ねえ、ご覧になりました?今月の少女の友」
「ええ、野口雨情先生の歌、可愛くて私好きよ。」
「私は赤い靴を掃いた少女の挿し絵が好きだわ。」
女学生逹が話しているのは少女雑誌に掲載されていた童謡の話である。「赤い靴」という題名で横浜の港から赤い靴を履いて少女が異国へと旅立つ歌だ。
「ごめん下さい。」
女学生逹が話に夢中になっていると来客を告げるベルがなった。
「いらっしゃいませ。」
リーズが対応する。
やって来たのは黒いスーツに髪を1つにしばった青年だ。
「すみません、ドレスをみたいのですが。」
「申し訳ありません、当店は婦人服のみ扱っていまして、紳士服はおいてありません。」
「こんな格好ですので勘違いさせてしまいましたね。私これでも女性です。」
青年、いや女性はリーズに旅券を見せる。
「Mary・Huet。」
名前はローマ字で書かれていた。国籍欄には「America」性別欄には「female」と書かれている。
「これは大変失礼致しました。アメリカの方でしたのね。」
「驚きますよね。私4才の時にアメリカ人の宣教師の養女になりまして、メアリーはその時にもらった名前です。日本名はきみといいます。」
きみ養父は札幌の教会で宣教師をしていて再び日本に戻ってきている。バイオリンを習っているきみは教会の仕事を手伝いながら演奏活動をしている。今日は楽団主宰の女性バイオリニストのコンテストに出場するため帝都に来たのだ。
「ねえ、赤い靴。素敵だと思いません?」
女学生逹が棚に飾られた赤い靴に目を向ける。
「きっとこの靴で女の子はアメリカに渡ったのよ。」
女学生が話しているのは歌に出てくる赤い靴の女の子の話である。
「赤い靴か。」
きみは女学生逹の話を耳にして呟く。
「マダム、あの赤い靴をくれないか?」
異国で養女になって男装って作者の好きなあの人想い浮かべました?
あの人は一切関係ありません。
今作のヒロインのモデルは童謡赤い靴の女の子です。




